東京8号線の事業化への鍵となっている「東京メトロ株」の売却についての議論がスタートした。2021年6月に答申素案が公表される見通し。注目は東京8号線延伸と並んで「品川地下鉄構想」「都心部と臨海部を結ぶ新たな地下鉄」整備の必要性もテーマになるという点だろう。東京8号線については考えていたよりもずっと調整は進んでいるようだ(2021/01/23)。
(東京都)
前提
・東日本大震災の復興財源として2027年度までに株式を売却(法定)
・東京メトロは法律で早期の完全民営化が求められている
国のスタンス
・株式上場の際の利益確保のため、財務悪化要因になる新線建設に否定的
・財務省は大型投資を認めない姿勢ではなく、上場への道筋がつくことを優先
東京都のスタンス
・メトロに新線を作らせるために株主という立場を維持したい
・東京8号線実現に取り組む約束があり前に進めたい
・新線整備が前提なら株式上場に積極的な反対はない
→国土交通省(株主ではない)が仲介役として「有識者委員会」を立ち上げた。
有識者委員会について
・委員会名称「東京圏の地下鉄のあり方を検討するための有識者委員会」
・株式の売却に向けた有識者委員会を立ち上げ。7月ごろの答申案を目指す。
・東京都は株式の売却にあたり、地下鉄有楽町線延伸(東京8号線)と「都心部と臨海部を結ぶ新たな地下鉄の整備」を求めているため、整備の必要性も議論する
委員会による答申案の可能性
一つの可能性として
6月に答申素案。国や東京都が支援することを前提に、一部の新線を作ることを東京メトロに要請。着実な株式の売却を求める(段階的な放出を含む)
関係者の間の調整は進む可能性が高いようだ。
そのほか
・議論の中心は東京8号線延伸
・2番手は品川地下鉄構想
・最後は都心部と臨海部を結ぶ地下鉄構想。
「ルートも煮詰まっていない」と指摘。
感想・まとめ
東京8号線延伸の実現は思ったよりも現実的になってきたようだ。ちょっと驚き。ただ、経営に大きく響く旅客減少に見舞われている中でどうなっていくのか。
・・・
新型コロナ流行前の2019年4〜9月と流行下の2020年4〜9月の比較では旅客運輸収入は4割以上減少した。
(東京メトロ)
20年3月期は緊急事態宣言期間を含む。乗客数は流行前との比較で7割程度の急減の後も3割程度の減少が続いているようだ。
有識者委員会の答申に新型コロナの影響がどの程度考慮されるのか、事実上棚上げして進むのか、そのあたりにも注目したい。