2023年夏の北日本の異常高温について、黒潮の顕著な北上が影響した可能性があるという研究結果が発表された。海面温度の上昇で雲ができにくくなって日射が増大し、温かい黒潮がさらに温められ、大気中の水蒸気が増えて温室効果が強まったというシナリオが示されている。
黒潮の北上が続く限り、こうした傾向は続く可能性がある。なかなか興味深い、とか言ってる場合ではないかもね(2024/07/23)。
概要
背景
・2023年夏(6〜8月)、北日本近海は1985年以降では夏としては最も海面水温が高く海洋熱波が発生
・通常冷たい親潮系の水が占める海域が2023年夏は黒潮続流の著しい北上に伴い、温かい黒潮系の水で湿られた。
・2023年夏の北日本は1946年の統計開始後歴代1位の暑い夏となった。
成果
・三陸沖から北海道太平洋沖の気温と水温の平年差の鉛直分布を解析。
・2023年は大気下層の高度約3000m以下の気温が全体として過去と比べ著しく高かった。高度800m以下で平年差は最大となった。
・2023年夏の地上の異常高温の要因が、上空の大気循環の変動に加え、大気と接する海洋側にあることを想起させた
・海洋表層の水温は深さ300mまで過去と比較して突出して高くなっていた。
→気温、水温の平年差の鉛直分布は2023年夏の地表付近の高温が、黒潮続流の北上に伴う顕著に高い海洋表層の水温により維持されたことが強く示唆された
どういう過程が働いたか
・顕著に高い海面水温により、海面付近の大気の安定度が低くなった
・大気の安定度が低くなったことで下層雲の量が顕著に減少した
・下層雲の量の減少により日射量が増加。
→沿岸地域の高温やさらなる海面上昇をもたらした
このほか
・三陸沖では海洋により大気が加熱された
・地表付近の大気が平年に比べて高温多湿に保たれ、水蒸気による温室効果が強化された。
・多湿化には南方から運ばれる水蒸気に加え、海洋熱波に伴って海面からの蒸発が活発だったと考えれれる
用語
・海洋熱波
海面水温が過去の記録と比較してその時期としては異常に高く、その極端な高温が数日から数ヶ月続く現象
・黒潮続流
房総半島以東の黒潮の流れ
・下層雲
大気下層の安定度が高い領域で多く発生する。夏の北日本近海は冷たい海面水温と南からの温かい空気に伴い、大気下層で安定度が高まり、下層雲が発生しやすい海域
感想・まとめ
黒潮の北上が異常熱波の要因ですか。
止めようがないもんね。