埼玉高速鉄道終点の浦和美園以北の延伸に関する動きについて少しだけ調べてみた。埼玉スタジアムに「一駅」届いていない現路線の延伸は興味があるところ。延伸に関しては国土交通省の交通政策審議会が答申198号に「埼玉高速鉄道の延伸(浦和美園〜岩槻〜蓮田)」を盛り込んでいる一方、事業性の厳しさも指摘されている。運行事業者はおそらく三セクの埼玉高速鉄道だが、どう実現に繋げるのだろうか(2023/10/12)。
「埼玉高速鉄道の延伸」概要
交通政策審議会答申198号
・事業性に課題
・関係地方公共団体等において、事業性確保に必要な需要創出につながる沿線開発、交流人口増加に向けた取り組み等を進め、事業計画について十分な検討が行われることを期待。
総事業費 1000億円
輸送密度 15300人/日
費用便益比 0・5〜0・4
累積資金収支黒字転換年 発散(黒字転換しない)
当初 事業概要(さいたま市)=2014年度
・先行整備 浦和美園〜岩槻(約7・2キロ)
構造 全線複線 浦和美園〜岩槻市の既成市街地までは高架、駅までは地下構造
概算建設費 790億円〜870億円
建設期間 最短5年間
運行者 埼玉高速鉄道
運行形態 各駅停車
運賃 埼玉高速鉄道の運賃体系
初乗り210円 岩槻〜浦和美園 350円、岩槻〜赤羽岩淵 630円
車両 現在10編成(6両)に加え1編成(6両)追加
・岩槻〜蓮田(約6キロ)
整備効果(さいたま市)
予定される今後の動き
2023年度
鉄道事業者に対する事業要請を行う
費用負担案の決定
中間駅まちづくり方針策定
2024年度 鉄道事業者サイドの動き
鉄道事業者→国
1️⃣営業構想、整備構想の認定申請
2️⃣速達性向上計画の認定申請
2027年度
鉄道事業者への事業要請に伴う速達性向上計画素案(案)及び中間駅まちづくり方針策定によるより具体的な内容に改定
感想・まとめ
費用便益比B/C=0・4〜0・5とされた事業。
事業性の試算はまだでていないみたい。原材料費高騰を踏まえ、慎重に進めているという知事答弁はあった。
当面の目標として2023年度中に鉄道事業者への事業実施要請までたどり着けるかどうか。そして費用負担案の決定にたどり着けるかどうか。
費用便益比B/C改善に向けた具体的方策や、累積収支が黒字にはならないと指摘された交通政策審議会で指摘された課題にどう向き合うか。そして迫る人口減少。
全体として整備に向けた機運情勢への努力は感じるが、事業採算性を試算できる段階ではないのだろうと推測する。
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整備すればさいたまスタジアムへのアクセス改善、中間駅付近の大学への交通アクセス(中間駅付近の整備構想は交通政策審議会の指摘した「沿線開発」だろう)、人形のまち・岩槻への観光客誘致など、一定の効果はあるだろう。
ただ、少し冷静に見ると、埼玉スタジアムへのアクセス改善は事業性の向上にはあまり寄与しないのではないか。すでに浦和美園までのアクセスは実現しているので、延伸による乗客増加は現状との「差分」にかぎられるということになる。
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鉄道事業者サイドの話まで踏み込んで書かれているので、なぜかと思ったら、運行事業者として想定されていそうな埼玉高速鉄道は県などが出資する第三セクターだった。
埼玉高速鉄道は一度、埼玉県や川口市、さいたま市による損失補償、債権放棄のほか、債務返済の繰延を経験したようだ。
どのように事業化を図るのかに注目したい。