東京都葛飾区内の新小岩と金町を結ぶ貨物線を使って旅客を輸送する「新金線旅客化」について、2025年1月に「新金線旅客化検討委員会の報告書」がまとめられ、5月に住民向け説明会で検討状況についての報告が行われた。BRT型車両の導入と並行専用道路の新設など鉄道にこだわらない案も示された。6つのケースについての検討結果が示されたが、LRT導入は厳しいという内容になっている(2025/08/12)。
新金貨物線旅客化について
求められる機能
定時性/速達性/輸送力/シンボル性/利便性・快適性/環境課題への対応
6つの整備手法を提示
住民説明会では6つの整備手法が提示された。
ケースA〜DはLRT車両を使う案、ケースEとFは連節車両(BRT)を使う案となっている。
使用車両イメージはLRTか連接車両(BRT車両)
貨物線を旅客線も走行するケース
ケースA 貨物線を旅客線も走行するケース 高架区間2・8キロ
ケースB 貨物線を旅客線も走行するケース 高架区間1・4キロ
全線所要時間 17〜21分
運行本数 ピーク時 8本/時 オフピーク 4本/時
運行、新しい線路の整備、保有・維持管理 第三セクター
土地の所有、既存線路の保有・維持管理 JR
貨物線の横に新たに線路を整備
ケースC 貨物線の横に新たに線路を整備 高架区間2・8キロ
ケースD 貨物線の横に新たに線路を整備 高架区間2・2キロ
全線所要時間 23〜26分
運行本数 ピーク時 8本/時 オフピーク 4本/時
運行 第三セクター
土地の所有、新しい線路の保有・維持管理 葛飾区(土地はJRから取得)
貨物線の隣に新たに専用道路を整備
ケースE 貨物線の隣に新たに専用道路を整備するケース 高架区間1・9キロ
ケースF 貨物線の隣に新たに専用道路を整備するケース 高架区間 なし
全線所要時間 26〜28分
運行本数 ピーク時 10本/時 オフピーク 6本/時
運行 第三セクター
土地の所有、新しい線路の保有・維持管理 葛飾区(土地はJRから取得)
事業性の検討 A/Bは費用便益費1未満、C/Dは長期収支黒字化せず
※ケースA、Bは国の補助が少なく、整備時の借入額が大きいため、長期的な資金収支が黒字に転換しない
※ケースC、Dは概算事業費が大きいため、費用便益費が1に届かない
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費用便益費:公共事業効果を金銭に置き換えて、事業の妥当性を評価するための指標。通常1以上なら総便益が総費用より大きいことから、事業は妥当なものと評価される
機能性検討と整備場の留意事項
※金町駅付近の高架化工事、国道6号線との平面交差は実現性の担保が得られていない(高架を設けるケースA~E)
※国道6号との交差部分を高架化する場合は、国道側の事業進捗に応じて、検討の必要がある。相当の期間が見込まれる(ケースA〜E)
ケースFについて
ケースFは、新小岩駅から高砂踏切付近までは既存線路と並行する専用道路を走行し、そこからは一般道路に出て金町駅北口に至るというルート。実現可能性は一番高そうだが、これはこれで課題があると思う。
感想・まとめ
2022年以来3年ぶりにこの話題を取り上げるが、課題整理をみると、6つのケースのうち実現可能性が残るのはケースF(貨物線の横に新たに専用道路を整備)のみか。
BRT型の連節車両の利用が想定されるが、この場合、葛飾区が新金線に求める機能として挙げた
「定時性/速達性/輸送力/シンボル性/利便性・快適性/環境課題への対応」
のほとんどでLRT型に劣る。
LRT型でなんとか事業の妥当性を高めることは出来ないものかと思うが、金町駅付近の高架化工事、国道6号線との平面交差は実現性の担保が得られていないということになると、そもそもケースAからEは案として成り立つ担保がないということになる。
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残るケースFだが、BRT型連節車両であのルートだと相当高度の運転技術が必要になりそう。また、今後必ずついて回る運転士不足に対応できるのかどうか。
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引き続き実現は非常に厳しいという印象は変わらなかった。
参考リンク等