葛飾区の「新金(しんきん)貨物線旅客化」の最新の検討状況について。2020年度末に最新の調査検討に関する概要が公表された。国道を横切る踏切の処理や段階整備手法の検討、モノレール・自動案内軌条式旅客輸送システムの可能性が検討されたようだ(2021/11/03)。
新金貨物線旅客化とは
(葛飾区)
総武線小岩駅と常磐線金町駅を結ぶ、中川と新中川に沿って南北に敷いた8・9kmの単線電化路線。葛飾区が検討する「新金線旅客化」はJR貨物が利用するこの区間に低床型の車両を走らせようという構想。
#111 葛飾区検討の「JR新金貨物線」の旅客化① 単独の項目で調査費1200万円計上 - dorattara! Season4
段階整備について
第一段階終端駅=(仮)新宿駅の検討
必要な機能
・折り返し機能
・退避機能(貨物列車の通過待ちのため)
→島式ホームとなる配線を想定
京成高砂駅〜(仮)高砂駅:距離約500mのアクセス方法検討
・京成高砂駅付近は連続立体交差事業化の検討が進められている。
・高架化に合わせ側道が整備されると予想される。乗り換えは側道を使ったアクセスが考えられる。
・(仮)高砂駅との距離は約500m。アクセス方法の検討が必要
モノレールや自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT)の検討
・新金貨物線上空にはJR東日本の6600Vの高圧線が通っていることに留意必要
参考 2019年検討資料より「事業費」
①ライトレール車両案 250億円
②電車案 200億円
事業スキーム
・施設はJR東日本が保有しているので、JR東日本が運行主体なら上下一体整備。
・運行主体がJR東日本以外の場合は上下分離方式。JRから施設軌道部分を借り、旅客化施設を運行主体が借りて運行
・貨物線の旅客化施設整備の補助率は20%。
・車両購入の補助は33%。
国道6号線との平面交差
国道6号線の踏切遮断時間を減らすための列車通過方法
旅客列車を踏切の手前で一旦停車
道路信号が赤信号の間に通過させる
・道路信号と連携していても鉄道信号に基づいて旅客列車が通行通過するのであれば鉄道事業法上、直ちに問題があるとは言えない(国土交通省鉄道局)
→鉄道事業法を適用した検討を進める
課題の整理
・青字が課題として示されている。
今後の取り組み
・国道6号線の平面交差における課題解決
・踏切システム、運行定時制の考え方、過走に対する安全確保などを検討
・事業主体、事業スキームの明確化
・段階整備の検討深度化を行う
施設計画、需要予測、終始採算性、終端駅の駅構造、車両基地、踏切部での交通影響、段階整備における貨物列車との併存
感想・まとめ
JR貨物利用の維持が前提でないと、成り立たないような気がする。JR関与のない形で、旅客だけでは厳しいだろう。
モノレール、AGTだとすると800億〜900億円の建設費、数十億の車両費用が必要。1000億円コースだろう。補助率も高いとは言えず、巨額の事業費が必要になりそう。そう考えると実現する可能性は低い。ほぼ自明だったと思うが、既存施設をそのまま使える鉄道案とライトレール案に絞ったというのが今回の検討の成果か。
国道6号の平面交差もクリアされたとは言い難い印象。
事業採算性の検討は今回もなし。前進しているとは思えなかった。