都営地下鉄大江戸線を現在の終点の光が丘から大泉学園町方面へ約4キロ延伸する構想について、東京都庁内のプロジェクトチームが2025年10月現在の検討状況を発表した。一応、前進していると思うが、4月24日の報道にあった「素案」や2016年の交通政策審議会当時の試算と比較すると、事業化に向けた環境は徐々に悪化していると思う。詳しくは末尾の「感想・まとめ」に記した(2025/10/15)。

- 「現在の検討状況」の内容=都PJチーム(2025年10月現在)
- 今後の検討事項
- 参考 大江戸線延伸ニュース(2025年夏発表)
- 参考:報道概要(日本経済新聞、2025年4月24日)
- 参考 大江戸線延伸ニュース(2025年春発行)
- 参考 大江戸線の延伸(交通政策審議会第198号答申関連資料)
- 感想・まとめ
- 参考リンク等
「現在の検討状況」の内容=都PJチーム(2025年10月現在)

プロジェクトチームとは
2023年3月 東京都副知事をトップに設置された「大江戸線延伸にかかる庁内検討プロジェクトチーム」のこと。
大江戸線延伸の概要

区間:光が丘〜大泉学園町前(仮称) 約4・0キロ
新駅(いずれも仮称):土支田駅、大泉町駅、大泉学園町駅
※延伸に伴う車両増加に対応するため、高松車庫を改修し、大泉学園町駅に引上げ線を整備予定(引上げ線は車両折り返しのための線路)
現時点での試算結果=一定の条件を仮定した資産で事業性改善
概算事業費 約1600億円(税抜)=2025年4月「素案」と変わらず
旅客需要 1日約6万人の増加=2025年春「延伸ニュース」から1日1万人増加
費用便益費(B/C):1以上=2016年交通政策審議会答申の「2・0前後」から悪化
収支採算性:累積損益収支黒字転換年 開業から40年以内=「素案」から4カ年悪化
※仮定した「一定の条件」は示されていないようだ
今後のステップ 次は事業計画案作成

今後の検討事項

試算にあたって仮定した条件としては
・練馬区による沿線まちづくりなどの具体化
ぐらいだろうか。
参考 大江戸線延伸ニュース(2025年夏発表)
プロジェクトチームからの練馬区への報告
・「一定の条件に基づくシミュレーションにおいて、区が財源の一部を負担することや、コスト低減のための鉄道施設整備に協力することにより、課題だった収支採算性が一定程度確保できる」
リンク 大江戸線延伸ニュース 第30号
参考:報道概要(日本経済新聞、2025年4月24日)
・東京都が地下鉄大江戸線を光が丘から約4キロ延伸する事業計画素案をまとめた
・開業の想定は2040年ごろ
・開業から36年目に累積損益解消(東京都試算)
・総事業費 約1600億円
・事業性評価(東京都) 「事業性に一定のみとおしがたった」
参考 大江戸線延伸ニュース(2025年春発行)
プロジェクトチームによる調査結果
・延伸により大江戸線利用者が1日約5万人増加
・事業費は概算約1500億円
・収支採算性等に課題
・プロジェクトチームによる調査結果がまもなくまとまる見込み
リンク 大江戸線延伸ニュース 第29号
参考 大江戸線の延伸(交通政策審議会第198号答申関連資料)

・今回の対象は大泉学園まで。
・当時の評価は
事業費 900億円、B/C2・0前後、累積資金収支黒字転換年 19年
輸送密度 約5万人/日
感想・まとめ
| 項目 | 2016年答申 | 2025年春 | 2025年4月報道 | 2025年10月 |
|---|---|---|---|---|
| 事業費 | 900億円 | 1500億円 | 1600億円 | 1600億円 |
| B/C比 | 2.0前後 | - | - | 1以上 |
| 黒字転換年 | 19年 | - | 36年 | 40年 |
| 輸送密度 | 5万人/日 | 1日5万人増 | - | 1日6万人増 |
2016年の交通政策審議会答申当時から比べると、事業費は700億円増加、輸送密度は1日1万人上乗せ?による試算で、B/C(費用便益比)が「2・0前後」から「1以上」に下がっている。累積資金収支黒字転換年も19年から40年と悪化している。
・・・
2025年4月の「素案」報道との比較でも、わずか半年程度で累積資金収支黒字転換年も36年から40年と悪化している。
プロジェクトチームの資料では「一定の条件を仮定した試算」では事業性が改善すると説明しながら具体的な内容は示されていないように見える。
一方、「大江戸線延伸ニュース」(2025年夏)の中で「区が財源の一部を負担することや、コスト低減のための鉄道施設整備に協力すること」と条件らしきことが記されている。定量的なことは書かれていないが結構きついのではないかな。
・・・
検討が止まっていないという意味では、前に進んだといえるものの、事業化に向けた環境は厳しさを増しているように見える。今後も建築費高騰の流れは止まらないだろうから、開業時に果たして採算が取れる試算となるのか、延伸計画は正念場を迎えたように思う。
・・・
これ、臨海地下鉄新線も他人事ではないよ。
参考リンク等
大江戸線延伸にかかる庁内検討プロジェクトチーム 現在の検討状況について(2025年10月)