富士山の眺望への影響からほぼ完成していた東京都国立市のマンション事業の中止を発表した積水ハウスが、中止の理由を公式に発表した。内容を確認しておく(2024/06/11)。
- 積水ハウスの公式発表概要(2024年6月11日)
- グーグルアースでみる眺望への影響
- 参考 グランドメゾン国立富士見通り(各種サイトより)
- 参考 NHK報道(6月11日)
- 参考 国立市議会議員の指摘(2024年2月・市議会定例会より)
- 感想・まとめ
- 参考リンク等
積水ハウスの公式発表概要(2024年6月11日)
・計画当初から富士山の富士見通りからの眺望に対して多くの声があった
・地域住民や国立市と協議を重ね、2回の設計変更を行ない、地域に配慮した設計を目指した
・完成が近づき、建物の富士山に対する影響が現実的になり、本社各部門で広範な協議
→現況は景観に著しい影響があると言わざるを得ず、富士見通りからの眺望を優先する判断。事業中止を決定。
・法令上の不備はない
・富士見通り、特に遠景からの富士山の眺望に関する検討が不足していた
→富士見通りからの眺望を優先するという判断に至り、事業中止を自主的に決定した
グーグルアースでみる眺望への影響
図はマンションそのままではない。ただ、ここに10階建てを建てれば、それなりの影響は出そうな場所。駅前を除けば富士通り右側にはそれほど高い建物は見当たらなかった。
参考 グランドメゾン国立富士見通り(各種サイトより)
竣工 2024年6月
戸数 19戸
階数 10階建
間取り・広さ 2LDK~3LDK、65・8㎡〜75・88㎡
参考 NHK報道(6月11日)
・来月に引き渡しが迫っていたマンションが解体される見通しとなった問題で、事業者が経緯などの説明文書をHPに公表。
・7月に契約者に引き渡されることになっていたが、事業者の積水ハウスは6月3日に事業中止と解体を決定。4日に国立市に届けた。
・不動産コンサルタントの見方
マンション建設の慣例として日照や眺望について周辺住民に説明会などを行い、交渉を進めていくが最後まで折り合いがつかず、裁判などに発展するリスクがあると判断したのではないか。金銭的な損失を取るか、企業としての評判を汚してしまう方を取るかという天秤の中で今回の決断に至ったのではないか
参考 国立市議会議員の指摘(2024年2月・市議会定例会より)
・富士見通りから富士山が半分削られて見えなくなってしまったとの訴えが住民から寄せられている。
・建設中の高層マンションが、富士山が見える眺望を遮った
・市民陳情が出されたマンション問題をめぐり、国立市議会は建物の高さを近隣商店やまちなみに合わせるよう全会一致で採択
・しかし現状は富士見通りや旭通り沿いの近隣商業地域と第一種低層住居専用地域における建物の高さ制限や容積率は課題として残されたままで進展が見られない。
・まちづくり審議会で度々指摘されてきたとおり、現状の国立市の都市計画やまちづくり条例では緑あふれる景観や自然は守ることはできないどころか後退している
感想・まとめ
市議会でも指摘はされていたようだが、指摘を受けた市長は「法を遵守した上で景観をいかに守っていくか努力していきたい」などと答弁するにとどまり、本件に関して実効性ある措置は取られなかったようだ。
あと、マンションが19戸だったというのもポイントかもしれない。わずか19戸のために失われる眺望の価値がどの程度なのか。
特徴的な眺望は地域の財産だと思うので、積水ハウスの判断には敬意を表したい。
竣工前まで工事が止まらなかったというのは、表には出てこない事情もあったんだろうね。知らんけど。