マンションの大規模修繕に欠かせない修繕積立金。不足すると計画的な修繕ができなくなるばかりか、マンションそのものの「生命維持」に影響しかねないものだが、値上げに対する抵抗が大きいのも確かだろう。管理組合総会における修繕積立金の値上げ議案に関する調査レポートが大和ハウス系シンクタンクから発表されたので、内容を見ておく(2022/08/02)
- 調査内容
- 積立金の値上げ議案における質疑応答 N=2531
- 質疑内容 N=2048
- ネガティブな質疑の6類型と質問例
- ネガティブな質疑の6類型と他の区分所有者への影響
- 類型別対応の考察
- 感想・まとめ
- 参考
調査内容
2015年8月〜2021年7月に積立金の値上げを総会の議案とした1694組合、3316議案のうち、無作為に1086組合2531議案を抽出して内容を調査。
積立金の値上げ議案における質疑応答 N=2531
積立金値上げ議案における質疑応答
あり 81% 2948件
なし 19% 483件
質疑内容 N=2048
特定の項目が長期修繕計画にあることの確認 150
駐車場の修繕、使用方法の見直し要望 110
今回の値上げで足りるのか 105
値上げ肯定意見 89
管理会社への不信 89
今後も値上がりするのか 84
とにかく反対 84
修繕周期を延ばすべき 79
※具体的な質問項目は末尾リンクから。
ネガティブな質疑の6類型と質問例
①代替案提案型
・修繕積立金値上げより経費圧縮が先
・修繕周期を延長してはどうか
・相見積もりで圧縮
②自己主張型
・とにかく反対
・聞いていない。突然言われても困る
③理事会批判型
・情報開示が不足
・アンケートなど合意形成への取り組みがない
・決議は時期尚早
④管理会社批判型
・値上げで利益を得るつもり
・管理会社の提案不足。委託費を減額して積立金に充当すべき
⑤売上批判型
・積立金値上げは販売時に説明がない
・建物の劣化が早いのでは。売主責任を追求し工事費負担をさせるべき
⑥他者代弁型
・年金生活者に配慮を。値上げを検討すべきではない
ネガティブな質疑の6類型と他の区分所有者への影響
①代替案提案型
最も他の区分所有者に対して影響か。実現可能性が高く、建設的な提案である場合は総会も建設的に終了。非現実的か、実現可能にしても相当時間を要する提案では、結果として決議しなかったり否決につながるケースも
②自己主張型
具体的根拠がないので他の区分所有者が追随する可能性は低い
③理事会批判型/④管理会社批判型/⑤売主批判型
③〜⑤は他者への非難を軸とする発言。
管理会社批判は怒り度が高く、他の区分所有者が追随する傾向。値上げという問題に対し、管理会社だけが部外者であるため批判しやすい。
理事会批判型は、理事長から丁寧に説明がなされrば終了することが多い。同じ区分所有者同士。
⑥他者代弁型
②の主語を「私は」から「他の区分所有者の方は」とした形。怒り度は伝わってこない。
類型別対応の考察
①代替案提案型
提案された代替案について「その案は検討済みで廃案としている」「実現可能性が極めて低いと思われる」と回答できるようにする必要あり。「調査して回答」とすると提案が拡大する可能性がある
長期修繕計画については「目安」との位置付けであることを理解してもらうことが必要。
③理事会批判型
・アンケート調査についての質問
1 値上げへの賛否を問うアンケート
情報提供がないまま二者択一で調査すると反対が圧倒的に多くなる。
過去の修繕履歴、将来の修繕工事予測といった十分な情報提供が必要
2 値上げ額を1つ選ばせるアンケート
アンケート結果と異なる増額幅を議案とすると不信感が生じる。
総会議案書にアンケート結果と異なる議案としたことについての説明が必要
3 アンケート調査結果を告知しないケース
4 総会において議長への委任状、議決権行使所で可決が決定している場合
アンケートで反対が多い場合に、委任状の取り扱いに意義が出る
・・・
→アンケート結果は理事会の審議場の参考資料であり、総会の議案提出は理事会の決議事項だと周知が必要。
④管理会社批判型
積立金値上げ議案の場合、管理会社から回答すべき質問以外は理事から説明する方が理解が得やすい。
感想・まとめ
なかなか面白い。こういうレポートが見たかった。
それぞれの質疑における質問例は、総会対策に使えるんじゃないかな。
想定問答集作りとか。