国土交通省が2011年策定のマンション修繕積立金のガイドラインを更新した。内容は収集した全国366のケースを分類してまとめたもの。このうちタワーマンションは全国の約40棟が対象のようだ。旧ガイドラインは新築マンション購入予定者参照のためのもので、今回の更新は既存のマンションの区分所有者、購入予定者も参照できることをめざしたそうだ。どう違うのか、今ひとつよくわからない。
当該マンションの全体での立ち位置を確認するためのもので、修繕積立金が足りているかを確認するツールにはなっていない(2021/09/30)。
修繕積立金と長期修繕計画
修繕積立金
・快適な居住空間確保と資産価値維持のための適時、適切な修繕工事のため、長期にわたって資金を積み立てていくのが「修繕積立金」。共用部の修繕工事に充てるもの。
長期修繕計画
・将来見込まれる修繕工事の内容と大凡の時期、概算費用を盛り込んだ計画。一定期間ごとに見直すことが前提。
修繕積立金の目安について
マンションごとに様々な要因で変動する。あくまで事例調査から導き出した目安。目安の範囲外にあっても、直ちに不適切とは判断されない。
計画期間全体の修繕積立金の平均額算出方法(㎡あたり月単価)
対象 区分所有者が自ら居住する住民専用マンション
・長期修繕計画作成ガイドラインに概ね沿って作成された長期修繕計画の事例を366例収集
・長期修繕計画の計画期間全体に必要な修繕工事費総額を、計画期間で積み立てる場合の専有面積あたりの月額単価で示している。
機械式駐車場にかかる修繕積立金は特殊要因として別に加算する
計画期間全体での修繕積立金の目安
機械式駐車場がある場合の加算額(117例のまとめ)
エレベーター方式は 4465円/台・月
20階以上の場合
一般に超高層マンション(20階以上)は外壁等修繕のため特殊な足場が必要で、共用部分の占める割合が高いため、修繕工事費は増大する傾向にある。
ケースの2/3が含まれる幅 240円〜410円/㎡・月
※幅は5円単位
平均値 338円/㎡・月
このガイドラインに使った366の事例について
①物件の規模
5階建未満/5~9階建/10~14 階建/15~19 階建/20~29階建/30 階建以上(特に 20 階建以上の超高層の物件は一定数を確保)
②築年数計画の見直し(1回目)を実施後大規模修繕工事未実施(概ね築5~12 年未満)
1回目大規模修繕実施済み(概ね築 15~20 年)
2回目実施済み(概ね築 25~30 年)
3回目実施済み(築 40 年以上)
③住棟の形式単棟型と団地型の比率は直近のマンション総合調査結果を踏まえ、団地型は全サンプルの1~2割程度。
「団地型」は、いわゆる5階建未満・半数以上の棟でエレベーターが設置されていない物件(修繕費用が安価になりやすいマンション)を想定。
④管理組合の総会等で2013 年9月以降に承認されている計画
①物件形態
単棟 89.6% 団地 10・4%(前回GLは単棟のみ)
②戸数
50戸未満 41・5%
50戸〜100戸 29・8%
200戸以上 16・1%
③階数
20階以上 11・5%(約40棟)
④専有面積
5000㎡未満 57・1%
10000㎡以上 21・6%
⑤竣工
2000年台 37・2%
1990年台 28.4%
10〜14年 7・3%
15年以降 2・1%(10年以降は9・4%=約35棟)
⑥地域
東京 約27%(約100棟)
長期修繕計画における修繕工事費の割合
修繕工事費は多い順に
①外壁塗装費 13・6%
②建具・金物等 9・7%(ここまで23・3%)
③仮設工事 9・0%(ここまで32・3%)
④給水設備 8・1%(ここまで40・4%)
⑤屋根防水 6・1%(ここまで46・5%)
⑤床防水 6・1%(ここまで52・6%)
⑦排水設備 5・8%(ここまで58・4%)
⑧立体駐車場設備 5・2%(ここまで63・6%)
⑨昇降機設備 4・3%(ここまで67・9%)
感想・まとめ
ガイドラインの目安とやらがどうやって算出されているのかに興味があってのぞいてみたら、当たり前のことが書いてあった。
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旧ガイドラインは、「主として新築マンションの購入予定者向け」となっていたが、今回は「主としてマンションの購入予定者やマンション区分所有者、管理組合向け」と書かれていて、以前と対象一部異なる。だからといって何が異なるのかはわからない。
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このガイドライン、自分の住むマンションが建物の階数別/建築延床面積別カテゴリの上下各1/6をカットした範囲に入っているかどうかは確かめられるが、これだけ積み立てれば大丈夫とは一言も書いていない。
集めた全国366の事例について、どの辺が平均値で、全体の上下各1/6をカットするとこの辺の範囲ですよー、って示している内容。一応、管理組合の総会等で2013 年9月以降に承認されている計画ということだけれども。
タワマン(20階以上)のサンプルは約40棟なので、上から7位〜33位ぐらいまでの範囲ということになるかな。タワマンの築年数別サンプル数は示されていない。物件によって事情が異なるので、このガイドラインを根拠に修繕積立金が足りているとか不足しているとかいうことはできないが、何も目安がないよりはマシか。
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個人的に興味深かったのは地上20階以上のいわゆる「タワマン」と地上20階未満、建築延床面積5000㎡未満のケースがほぼ同水準だったこと。
建築延床面積が5000〜20000㎡までの物件を選択するとタワマンや5000㎡未満の物件より、60〜70円/㎡・月安上がりという傾向があるようだ。70㎡だと年間5〜6万円の差になる。
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旧ガイドラインとの比較をすると何か書けるかもしれないが、そういうのは好きな人がやるだろう。筆力のある方のブログでも拝見しよう。