2021年2月24日、3カ月ごとに発表される主要都市の高度利用地地価動向報告=地価LOOKレポートが発表された。このレポートは不動産鑑定士が全国100地区についての不動産市場の動向に関する情報を集めて地価動向を調べ、国土交通省でまとめたもの。

全体概要
新型コロナウイルスの影響がどの程度残るのかに注目していたが、首都圏43地点では早くも上昇に転じた地点が現れ始めているようだ。ただしいずれも横浜・川崎エリアで東京はゼロ。
全体概要(100地点)上昇 15地点(前回1地点)横ばい 47地点(前回54地点)下落 38地点(前回45地点)変動率区分下方変動は 地区(前回10地区)上方変動は 地区(前回 3地区)首都圏概要(43地点)上昇 6地点(前回 0地点)横ばい26地点(前回34地点)下落 11地点(前回 9地点)変動率区分上方変動8地点下方変動4地点(前回 4地点)全国住宅(32地点)上昇 9地点(前回 0地点)横ばい20地点(前回26地点)下落 3地点(前回 6地点)変動率区分上方変動10地点下方変動 0地点(前回1地点)
東京臨海部概要
▼佃・月島(0%横ばい 前期:0%横ばい)
(現況)=住宅需要は回復、安定
当地区は銀座等の都心への優れた接近性を備えるとともに、東京タワーや東京スカイツリー等のランドマーク施設や河川等に囲まれた変化に富んだ眺望が得られることから、分譲・賃貸ともに高層マンションの需要が強く、人口・世帯数共に増加傾向にあり、BRTのプレ運行や環状2号線の整備等の都市基盤整備による利便性の向上のほか、子育て関連施設などの生活利便施設の拡充など、さらなる発展が期待される。新築及び中古マンションの売買取引に係る住宅需要は新型コロナウイルス感染症の緊急事態解除宣言以降回復しており、販売在庫数や需給動向は安定し、マンション分譲価格は横ばいで推移している。マンション開発素地については、当地区の安定したマンション市況や、周辺で見込まれる各種開発への期待感を背景に、取引利回りは横ばいで推移し、デベロッパー等による素地需要に変化は見られないことから、当期の地価動向は横ばい傾向で推移した。
(前期現況)
当地区は銀座等の都心への優れた接近性を備えるとともに、東京タワーや東京スカイツリー等のランドマーク施設や河川等に囲まれた変化に富んだ眺望が得られることから、分譲・賃貸ともに高層マンションの需要が強く、人口・世帯数共に増加傾向にあり、BRTのプレ運行や環状2号線の整備等の都市基盤整備による利便性の向上など、さらなる発展が期待される。新築及び中古マンションの売買取引は新型コロナウイルス感染症の影響により一時停滞したが、緊急事態解除宣言以降は取引件数が徐々に回復しており、販売在庫数や需給動向に大きな変化は生じておらず、マンション分譲価格については横ばいで推移している。マンション開発素地については、当地区の堅調なマンション市況や、周辺で見込まれる開発への期待感を背景に、デベロッパー等による素地に対する需要は継続して強く、取引利回りは横ばいで推移し、当期の地価動向は横ばい傾向で推移した。
(今後)=悪くはない。横ばい続く
新型コロナウイルス感染症がマンション市況に与える影響は不透明であるが、根強いマンション需要に支えられ、マンション分譲価格及び賃料については横ばい傾向が続くと見込まれることから、将来の地価動向は横ばいで推移すると予想される。
(前期の今後)
当地区においては、複数の市街地再開発事業が進捗中であり当面は新規供給が少ないことから、オフィス賃料の下落に結びつくほどの稼働率の低下は見込まれず、将来の地価動向は引き続き横ばいで推移すると予想される。
▼豊洲(0%横ばい 前期:0%横ばい)
(現況)回復ステージ入り
当地区は、他の湾岸エリアと同様に需要者の購入意欲が底堅いエリアである。新型コロナウイルス感染症の影響により停滞していた売買取引は回復基調にあり、直近の新築分譲マンションの販売状況は概ね良好で価格は横ばいで推移した。中古マンション市場においては、供給量の少なさから新型コロナウイルス感染症の拡大以降も大きな値崩れは見られず、価格水準は概ね横ばいで推移している。このようなマンション需要の底堅さとともに、マンション開発素地の供給が極めて少ないこと等からデベロッパー等の開発素地需要は安定しているものの、新型コロナウイルス感染症の影響等から取引利回りは横ばい傾向が続いており、当地区の地価動向は横ばいで推移した。
(前期現況)
当地区は、他の湾岸エリアと同様に需要者の購入意欲が底堅いエリアである。新型コロナウイルス感染症の影響により停滞していた売買取引は徐々に回復しつつあるが、取引当事者は今後の市況を見極めようとする慎重な姿勢を継続しており、マンション分譲価格は横ばいで推移した。このような分譲マンション需要の底堅さとともに、マンション開発素地の供給が極めて少ないこと等からデベロッパー等の開発素地に対する需要は安定しているものの、新型コロナウイルス感染症の影響等から取引利回りは横ばい傾向が続いており、当地区の地価動向は横ばいで推移した。
(今後)変化なし
当地区は、利便性の高さから買換え需要を中心にマンション需要は引き続き安定的に推移すると予想され、優良なマンション開発素地に対する需要も安定した状態が持続すると見込まれる。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することによってデベロッパーの取得意欲の減退等の懸念はあるものの、将来の地価動向は当期同様に概ね横ばいで推移すると予想される。
(前期の今後)
当地区は、利便性の高さから買換え需要を中心にマンション需要は引き続き安定的に推移すると予想され、優良なマンション開発素地に対する需要も安定した状態が持続すると見込まれるため、新型コロナウイルス感染症の影響による取引停滞等の懸念はあるものの、将来の地価動向は当期同様に概ね横ばいで推移すると予想される。
▼有明(0%横ばい 前期:0%横ばい)
(現況)回復ステージ入り
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言以降、しばらく停滞していたマンションの取引等は回復傾向にある。新築分譲マンションの大量供給によりマンション分譲価格の上昇は見られないものの、大規模複合施設等の開発が進む当地区の注目度は高く、売れ行きは良好である。今後も大量供給は続き、新型コロナウイルス感染症の収束時期は不透明であるなどの懸念材料はあるものの、国家戦略特区の認定を受けた大規模複合施設の開業や東京五輪関連施設が立地するほか、将来的にも環状2号線の開通や銀座と有明を結ぶ地下鉄構想があるなど、注目度は非常に高い。以上から、当地区はデベロッパーの安定した開発素地需要が見込めるエリアであることに変わりはなく、取引利回りは概ね横ばいで推移したことから、当期の地価動向は横ばいで推移した。
(前期現況)
(今後)変化なし
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することによる市況悪化の懸念は払拭されていないものの、当地区の将来性を背景にデベロッパーの開発素地取得需要は底堅いことから、将来の地価動向は横ばいで推移すると予想される。
(前期の今後)
新型コロナウイルス感染症の影響から、市況悪化の懸念は払拭されていないものの、当地区の将来性を背景にデベロッパーの開発素地取得需要は底堅いことから、将来の地価動向は横ばいで推移すると予想される
そのほか
上昇に転じた首都圏6地点
いずれも0〜3%の上昇(前期は0%横ばい)
・川崎市川崎区の商業地(川崎関東口)
概ね、新型コロナ回復ステージ入りと、コロナの影響を限定的だったとする見方が多い。一方で、上限価格に近づいているというという懸念材料が指摘されているものもみられた。
下落した東京の4地点
いずれも0〜3%の下落(前期は0%横ばい)
・八重洲
・日本橋
・品川駅東口周辺
概ね、新型コロナによる来街者減少は回復せず店舗賃料が下落。競合ビルの潜在的空室は増加傾向。
・青海・台場
インバウンド需要の消滅による来街者の大幅減少で店舗・ホテル稼働率低下。オフィス需要も弱含みで空室率上昇。店舗賃料下落。地価下落傾向。
参考:日本不動産研究所の解説動画
第53回(令和2年第4四半期)地価LOOKレポート ポイント解説
・内容の解説というより、資料の読み方の説明だった・・・
感想・まとめ
予想以上に新型コロナからの回復ステージ入りが早い印象。
今後の景気の落ち込みがどの程度影響するのかや、新型コロナワクチン接種の影響がどういう形で出てくるのかに注目だろうか。
一方で、日本の中心地とも言える八重洲、日本橋、それに大規模再開発の進む品川駅エリアでの総合評価の下方修正はちょっと目立つ。