2021年6月4日、3カ月ごとに発表される主要都市の高度利用地地価動向報告=地価LOOKレポートが発表された。このレポートは不動産鑑定士が全国100地区についての不動産市場の動向に関する情報を集めて地価動向を調べ、国土交通省でまとめたもの。
参考:直前の四半期
全体概要
新型コロナウイルスの影響がどの程度残るのかに注目していたが、首都圏43地点では上昇に転じた地点が増加した。変動率区分の上方修正も7(下方修正は1)となり、コロナ禍前の傾向に復帰しつつある。
全体概要(100地点)上昇 28地点(前回15地点)横ばい 45地点(前回47地点)下落 27地点(前回38地点)首都圏概要(43地点)上昇 10地点(前回 6地点)横ばい23地点(前回26地点)下落 10地点(前回11地点)変動率区分上方変動7地点(前回 8地区)下方変動1地点(前回 4地点)全国住宅(32地点)上昇 18地点(前回 9地点)横ばい14地点(前回20地点)下落 0地点(前回 3地点)
東京臨海部概要
▼佃・月島(0%横ばい 前期:0%横ばい)
(現況)=安定
当地区は銀座等の都心への優れた接近性を備えるとともに、東京タワーや東京スカイツリー等のランドマーク施設や河川等に囲まれた変化に富んだ眺望が得られることから、分譲・賃貸ともに高層マンションの需要が強く、人口・世帯数共に増加傾向にある。BRTのプレ運行や環状2号線の整備等の都市基盤整備による利便性の向上、子育て関連施設等の生活利便施設が拡充される等、さらなる発展が期待される。新築及び中古マンションの販売価格については安定しており、取引件数についても、販売在庫数や需給動向に大きな変化は生じておらず安定的に推移している。マンション開発素地については、デベロッパー等による需要が継続して強く、当地区の安定したマンション市況や、周辺で見込まれる開発への期待感を背景に、取引利回りは横ばいが続き、当期の地価動向は横ばいで推移した。
(前期現況)
当地区は銀座等の都心への優れた接近性を備えるとともに、東京タワーや東京スカイツリー等のランドマーク施設や河川等に囲まれた変化に富んだ眺望が得られることから、分譲・賃貸ともに高層マンションの需要が強く、人口・世帯数共に増加傾向にあり、BRTのプレ運行や環状2号線の整備等の都市基盤整備による利便性の向上のほか、子育て関連施設などの生活利便施設の拡充など、さらなる発展が期待される。新築及び中古マンションの売買取引に係る住宅需要は新型コロナウイルス感染症の緊急事態解除宣言以降回復しており、販売在庫数や需給動向は安定し、マンション分譲価格は横ばいで推移している。マンション開発素地については、当地区の安定したマンション市況や、周辺で見込まれる各種開発への期待感を背景に、取引利回りは横ばいで推移し、デベロッパー等による素地需要に変化は見られないことから、当期の地価動向は横ばい傾向で推移した。
(今後)=横ばい続く
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することにより市場参加者は引き続き市況を見極めようとする姿勢が見られるものの、当地区の根強いマンション需要に支えられ、マンション市況は安定した状況が続くと見込まれることから、将来の地価動向は概ね横ばいが続くと予想される。
(前期の今後)
新型コロナウイルス感染症がマンション市況に与える影響は不透明であるが、根強いマンション需要に支えられ、マンション分譲価格及び賃料については横ばい傾向が続くと見込まれることから、将来の地価動向は横ばいで推移すると予想される。
▼豊洲(0%横ばい 前期:0%横ばい)
(現況)供給少なく一部で価格上昇傾向
当地区は、他の湾岸エリアと同様にマンション需要者の購入意欲が底堅いエリアである。新型コロナウイルス感染症の影響により停滞していた売買取引は回復基調にあり、直近の新築分譲マンションの販売状況は概ね良好で価格は概ね横ばいで推移した。中古マンション市場においては、供給量の少なさから一部のマンションで価格の上昇も見られる等、価格水準は上昇傾向で推移している。このようなマンション需要の底堅さとともに、マンション開発素地の供給が極めて少ないこと等からデベロッパー等のマンション開発素地需要は安定しているものの、新型コロナウイルス感染症の影響等から取引利回りは横ばい傾向が続いており、当地区の地価動向は横ばいで推移した。
(前期現況)
当地区は、他の湾岸エリアと同様に需要者の購入意欲が底堅いエリアである。新型コロナウイルス感染症の影響により停滞していた売買取引は回復基調にあり、直近の新築分譲マンションの販売状況は概ね良好で価格は横ばいで推移した。中古マンション市場においては、供給量の少なさから新型コロナウイルス感染症の拡大以降も大きな値崩れは見られず、価格水準は概ね横ばいで推移している。このようなマンション需要の底堅さとともに、マンション開発素地の供給が極めて少ないこと等からデベロッパー等の開発素地需要は安定しているものの、新型コロナウイルス感染症の影響等から取引利回りは横ばい傾向が続いており、当地区の地価動向は横ばいで推移した。
(今後)今後の地価はやや上昇で推移しそう
当地区は、利便性の高さから買換え需要を中心にマンション需要は引き続き安定的に推移すると予想され、優良なマンション開発素地に対する需要も安定した状態が持続すると見込まれる。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することによってデベロッパーの取得意欲の減退等の懸念はあるものの、直近の販売状況が概ね良好であることを踏まえると、将来の地価動向はやや上昇で推移すると予想される。
(前期の今後)
当地区は、利便性の高さから買換え需要を中心にマンション需要は引き続き安定的に推移すると予想され、優良なマンション開発素地に対する需要も安定した状態が持続すると見込まれる。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することによってデベロッパーの取得意欲の減退等の懸念はあるものの、将来の地価動向は当期同様に概ね横ばいで推移すると予想される。
▼有明(0%横ばい 前期:0%横ばい)
(現況)中古は供給少なく一部で価格上昇
新型コロナウイルス感染拡大に伴う2回目の緊急事態宣言により、分譲マンションの販売では一時的な停滞が危惧されたものの、影響は小さく、直近の販売状況は概ね良好であった。マンション分譲価格は大量供給により上昇傾向は見られないが、中古物件については供給量の少なさから、一部で価格上昇の動きが見られる。今後も大量供給は続き、新型コロナウイルス感染症の収束時期は不透明である等の懸念材料はあるものの、国家戦略特区の認定を受けた大規模複合施設の開業等により生活利便性が向上しており、将来的にも環状2号線の開通や銀座と有明を結ぶ地下鉄構想がある等、当地区の注目度は非常に高い。こうした背景により、デベロッパーのマンション開発素地需要が底堅いエリアであることに変わりはなく、取引利回りは概ね横ばいで推移したことから、当期の地価動向は横ばいで推移した。
(前期現況)
(今後)今後の地価はやや上昇傾向で推移
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することによる市況悪化の懸念は払拭されていないものの、直近の販売状況は概ね良好であり、当地区の将来性を背景にデベロッパーのマンション開発素地需要は底堅いことから、将来の地価動向はやや上昇傾向で推移すると予想される。
(前期の今後)
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化することによる市況悪化の懸念は払拭されていないものの、当地区の将来性を背景にデベロッパーの開発素地取得需要は底堅いことから、将来の地価動向は横ばいで推移すると予想される。
感想・まとめ
毎年2、5、8、11月の25日前後に発表となっている地価LOOKレポート、今回はやや遅れての発表になった。予定が遅れる時には大きな変化があった場合が多い。
今回は23区内で変動率区分が下方修正された場所は港区六本木のみで上方修正が目立った。
(変動率区分下方修正)
横ばい→0〜3%下落 港区六本木
(上方修正)
3〜6%下落→0〜3%下落 台東区上野
また、臨海部の定点観測3箇所のうち、豊洲と有明は変動率区分が据置されたものの、将来の価格動向についてはやや上昇と明記された。
地価動向に関しては、新型コロナの急性期の影響は終わった印象を受けた。