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#2032 都市鉄道整備の費用負担対象となる「多様な主体」に不動産所有者、住民の項目 国土交通省検討会

2024年6月、国土交通省の「今後の都市鉄道整備の促進策のあり方に関する検討会」が全34ページの報告書案をまとめた。副題が幅広い受益者による費用負担を通じた都市鉄道整備の促進」となっていて、「幅広い」の中に「不動産所有者」や「住民」が含まれていたことが目を引いた(2024/06/27)。

国土交通省

はじめに

・人口減少局面でも都市の持続的発展を実現するには、引き続き、利用者や社会のニーズに的確かつ迅速に応える都市鉄道の整備を着実に進める必要がある

・都市鉄道整備の主な担い手である鉄道事業者は、新型コロナで経営・財政状況が悪化。行動変容や中長期的な人口減少による輸送需要の大幅な拡大が見込めない。

・投資規模の大きさや利用者利便性に大きく寄与するという公共性等を踏まえた各種補助制度で支援してきたが、国・地方公共団体の財政状況は厳しい

・都市鉄道整備の効果は直接の受益者である利用者を中心としつつも沿線地域の活動活性化などの形で広く及ぶ。基本的な費用負担の考え方まで立ち返って見直すべき点がないか、都市鉄道整備の費用負担の基本的な考え方や制度・運用の改善策を含めて検討を進めた

今後の都市鉄道整備の費用負担の基本的な考え方

主に受益すると想定される主体

①鉄道利用者

 直接的受益者

鉄道事業者

 整備により沿線人口増加、都市鉄道利用者増加が見込まれる。直接・間接的受益者

③沿線企業/④不動産所有者

 整備により来訪者増加。将来的需要拡大から企業立地が進むと想定。沿線地価の上昇も見込まれる。資産価値向上が想定される、間接的受益者。

⑤開発者

 沿線の土地利用の高度化により開発計画の事業収支の改善等が想定されれば間接的受益者

⑥住民/⑦国・地域

 都市鉄道整備によりバス、自家用車等の交通機関からの利用転換が見込まれ、沿線環境の改善、二酸化炭素排出削減に寄与。間接的受益者。

 整備による沿線地価の上昇、鉄道事業者・企業の増収の一部は時間経過とともに固定資産税の税収増加、法人税の税収増加となることが想定される。国・地域もこの観点からは間接的受益者

受益すると考えられる主体と受益の内容=国土交通省

今後の都市鉄道整備における費用負担の方向性

基本

・必要な費用負担は鉄道利用者の運賃を原資とする鉄道事業者による費用負担が基本

・国と地方公共団体において、適切な役割分担のもと各種の補助制度を通じ支援する考え方も基本

他方

・プロジェクトごとに見込まれる都市鉄道の開発利益についても検討し、地域・開発者をはじめとする多様な主体による費用負担を検討することが重要

・鉄道整備と沿線開発を一体的に推進することで地域における住民の生活の向上と市域の秩序ある発展に寄与する場合

 →地方公共団体を通じた間接的費用負担

・都市鉄道の開発利益により開発計画の事業成立性が大きく向上するなど、開発者への便益が著しく波及する場合

 →開発者による都市鉄道の整備費用への直接的な費用負担

 →既存路線への負担が相当程度想定される場合は、駅改良費等の一部を直接負担

利用者負担制度の見直しの方向性

・都市鉄道整備に対する利用者のニーズが多様化・高度化。これらのニーズに応える都市鉄道整備を促進するため事業の種類・規模を見直す

・利用者の負担を長期にわたって平準化できるようにするため、収受範囲と期間を見直す

・整備にかかる費用負担は「受益すると認められる利用者」に求めることが望ましい

「受益すると認められる利用者」

①供用開始後

 整備区間を利用することで受益する利用者

 整備区間以外の区間を利用することで受益する利用者

②供用開始前

 供用開始後に受益することが見込まれる利用者も対象とすることができる

収受可能額

・供用開始前の収受可能総額は一定の制限(例えば整備費用の1/2以内)を設けることが考えられる

・一人一乗車当たりの収受額は、利用者に合理的説明が可能が額に設定することが考えられる(供用開始前の利用者からの収受額は原則、供用開始前後の利用者からの収受額を超えない等)。

利用者負担の見直しの方向性=国土交通省

感想・まとめ

今回示されたのは見直しの方向性。

供用開始前でも供用開始後に受益が想定される利用者の費用負担といった内容や、費用負担が求められる「多様な主体」に「住民」「不動産所有者」の項目が入ったことが目を惹く。

この時期に取りまとめ案が出てきたとなると、有楽町線分岐線や南北線分岐線、臨海地下鉄なんかも対象に含まれてくる可能性はあるのだろうね。

検討は続く。

参考リンク等

今後の都市鉄道の促進策のあり方に関する検討会 取りまとめ案概要