アメリカ・ノースウエスタン大学の研究チームが「シカゴ中心部で地下の温度上昇により地盤が変形している」という論文を発表し、基礎が壊れるかもしれないと話題になっているそうだ。興味深い話なのでメモ。地下温暖化自体は日本国内でも確認されている(2023/08/29)。
論文概要
論文は2023年7月11日付、米学術誌「コミュニケーションズ・エンジニアリング」に掲載
・シカゴ中心部を対象に地下の温度を実際に計測
・過去や未来の変化をシミュレーション
1️⃣シカゴ中心部を走る全長約2・9キロの環状高架鉄道が通るエリアに約150個の温度センサーを設置。3年間データを収集
結果
・環状鉄道の地下温度が緑地(グランドパーク)の地下温度より10度高い
・地下構造物の気温は影響を受けていない地表の温度より最大25度高くなるかも
・熱が地面に向けて拡散すると、温度変化に応じて膨張、収縮する材料に大きなストレスがかかる
・地下の気候変動は世界中のほぼすべての密集した都市部に共通している
2️⃣対象エリアの建物の地下部分を3次元モデルで再現し、温度データから1951年〜2051年の約100年間の鉛直歪みを予測
結果
・地下温度は浅い地盤ほど高くなる傾向
・約100年で平均1〜5度程度、最大15度の温度上昇があった
・柔らかい粘土と硬い粘土は加熱すると収縮、他の材料は加熱で膨張する
・気温が上昇すると地面は最大12ミリ上方に膨張する可能性
・地盤は建物の重みで8ミリ収縮し下方に沈下するかも
・地下の気候変動による深刻な地盤変形は土木インフラの性能に影響を及ぼす可能性
・変形はひび割れや行きすぎた基礎沈下につながるおそれ
・米では比較的新しい建物が多く温度変化に対して有利
・欧州では熱の擾乱に敏感な過去の設計や建築方法を守っており、地下のヒートアイランドに「より脆弱」
解決策の提案
廃熱を建物の暖房に利用する地熱技術を取り入れる
最も効果的なアプローチは無駄な熱量を最小限に抑える方法で地下構造物を隔離すること
参考 日本における地下温暖化(埼玉県の例)
埼玉県環境科学国際センター(2020年)
・地下温暖化現象は本当に起きている
・地表から50m以下では直線的に温度が上昇。
・50mより浅い部分では急激に温度が上昇。地下20mでは温暖化による影響がない場合に比べ2・5度上昇している。この10年で0・5度上昇した
・こうした現象は埼玉県内の広い範囲で発生している
(影響)
・土壌微生物の種類、数が変化する可能性がある(農業に影響)
・地下水の水質への影響があるかも(農業に影響)
・地中の熱を使った暖房など熱資源としての利用も考えられる
参考 大阪平野の例(2015年)=詳しい
感想・まとめ
地下のヒートアイランドねー。
地上の温暖化で説明できるモデルが「大阪平野」の文献に示されていた。
これって短期間での地球温暖化を示す強烈な証拠の一つだよなあ。
・・・
解決策は温度の「免震構造」だって。なかなか面白い。