2024年4月30日、築地市場跡地再開発事業者から地元自治会に対する事業説明会が開催された。事業予定者の口から、これまで表に出ていなかったと思われる情報がかなり明らかになってきたので、まとめておく(2024/04/30)。
東京都への説明資料内容
2023年8月末 提案締め切りを前に応募
2024年4月19日 事業予定者選定
構成は11社
事業会社3社
設計会社 日建設計、パシフィックコンサルタンツ
跡地再開発の基本事項
所在位置 中央区築地五丁目、築地六丁目
活用都有地面積 約19万㎡
総延床面積 約117万㎡
総事業費 約9000億円
開業時期 2030年代前半以降(一部施設は2029年度に先行開業)
5つのポイント
①5万人台収容の大規模集客施設(マルチスタジアム)を中心とする
「ウェルネスイノベーション」「食・体験・にぎわい」「迎賓・ホスピタリティ」を3つの柱に国際競争力を強化
②世界に誇る食、文化、芸術を発展。築地の歴史と発展を生かした観光都市に
③浜離宮庭園と隅田川を生かし、約10万㎡の都心有数のオープンスペース。多くの人に集ってもらい、くつろぎ、さまざまな体験をしてもらえるスペースとする
④陸海空の広域交通結節点の整備、築地の場外市場と連動した賑わいと交流の促進
地下鉄新駅との結節、首都高晴海線との結節 空飛ぶクルマの乗り入れ
バスやタクシーの乗り入れ
次世代モビリティの活用
⑤最先端の環境技術を活用したカーボンニュートラルの達成
配棟計画
①大規模集客・交流施設(マルチスタジアム)
・約5万人規模(用途に応じて約27000〜57000席)
・可動席と仮設席でスタジアムが「超可変性」
・想定イベントはラグビー、サッカー、野球、サッカー、バスケ、eスポーツ、MICE、音楽ライブ、コンサート、演劇等)
②ライフサイエンス・商業複合棟 「ライフサイエンスコミュニティ中核拠点」
・国立がん研究センターに近接し、霞ヶ関にも近い立地を生かして、高度人材や情報の集積を促す「イノベーション・プラットフォーム」を構築。バイオテクノロジー、ヘルスケア産業の強化を目指す
③MICE・ホテル・レジデンス棟
・MICE施設(メインホール、バンケット、大中小会議室等)
・上質な大規模ホテル
・短期〜中期滞在の拠点として使える居住機能
④舟運・シアターホール複合棟
・築地ならではのフードホール、食に関する研究機能を持つフードラボ
・文化、芸術の感動を共有するシアターホール(収容人数約1200人)
・舟運待機機能
⑤⑥ホテル棟
・浜離宮恩賜庭園の景観を取り込む
・国賓やVIPの迎え入れが可能な世界トップクラスの宿泊滞在機能
⑦レジデンス棟
・世界のエグゼクティブや高度人材を受け入れる滞在・居住機能
⑧オフィス・レジデンス棟
・中長期の滞在ニーズに応えるハイグレードな居住機能とオフィス
⑨オフィス棟
・シェアオフィスを含むオフィスと商業機能
質疑(一部)
質問)③⑦⑧は分譲マンションか
回答)詳細はこれから。企画の検討の中で考える。分譲は一部。延床面積の3%の縛り(117万㎡の3%は約3万5000㎡)がある。賃貸も考えている。明確な戸数は提案にはないが割り出すと500−700戸か(三井不動産)。
※500戸だと一部屋平均70㎡、700戸だと一部屋50㎡となる
質問)マルチスタジアムの5万人収容、人流への対応はどうするか
回答)銀座、新橋方面に人の流れを分散させることやシャトルバスの運行、時差をつけて帰っていただけるような時間軸での分散などの工夫を検討。
質問)高層建物の高さは
回答)航空法により約210m。210mを想定している。
質問)中央区には小学校に余裕がない。そこに分譲マンションはできないほうがいいのではないか。
回答)中央区の小学校用地がもうない。レジデンス棟ができることで、小学生が増えるような想定はしていない(中央区)
・・・
このほか、5万人収容のスタジアムへのアクセスとして、唯一の地下鉄である大江戸線が開業を受けて需要を賄いきれなくなると地元への影響が大きいといった指摘もあった。現在の東京ドームはアクセスとしては非常に恵まれた立地。
(吉田副区長)
現状で5万人収容のスタジアムができたら間違いなく晴海通りはパンクする。渋滞になれば(集まった)みなさんの生活に響くことになる。そういうことが起きないようにすることが大事だ。
築地駅に行くにも晴海通りを渡らないといけない。立派なものができるのは結構だが、迷惑が地元にかかるのは困る。
納得できるスケジュールで頑張らないといけない。
感想・まとめ
滞在機能としてホテルと住宅が9棟の半分を占めるという内容は少々プアーにも見える。提案した計画のままでは進みそうになく、配棟計画や交通計画からの見直しが必要になりそうだなあという感想。 提案の住宅建設に関しては、「立ち入り禁止エリア」を設けることが都民に開かれた場所といえるのかという趣旨の疑問が事業予定者の選考委員から示されていたね。
中央区の指摘はレジデンス棟により小学生が増えても収容先がないということを明確に示した。一般富裕層向けの住宅には否定的と感じた。例で示されていた「世界のエグゼクティブ」「高度人材」や「高齢者」など、特別な層の滞在・居住機能を想定することになるのかも。
約20ヘクタールを「大スタジアム+滞在・居住施設+ライフサイエンス棟」にするという提案だったが、これが築地の今後70年を賭けるに値するものになるのか、提案のブラッシュアップを待ちたい。
・・・
(質疑の部分は、メモが消えてしまったので記憶から書いている。中央区が後日出す議事録で修正を予定)。