東京都がおおむね5年に1回公表している「地震に関する危険度測定調査」(第9回)の結果が公表された。建物倒壊危険度や火災危険度は月島地区全域で改善しているのに、月島三丁目では総合危険度が前回の4倍以上、ランクは2ランクダウン(悪化)とされていた。災害時活動困難係数の影響だった。
各区区議会の議論では具体的な数値ではなくランクだけがテーマになることが多く、誤解を招きやすい改定だなあ。評価方式を変えたからランクダウンになったという説明だけでは済まない気がする・・・
そう思っていたところ、奇しくも月島二丁目で火災。確かに消火作業を見ると確かに難しく見えた。正しい方向の改定なのか?(2022/11/15)
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地震時地域別危険度測定 第9回について
調査対象区域 5192町丁目(第8回から15町丁目増加)
想定地震
工学的基盤に同一の地震動の強さを設定
最も危険な状況となる冬.夕方の数値を用いた
総合危険量が高い順番に並べ、地域危険度を5段階で相対評価した
総合危険量(棟/ヘクタール)
=(建物倒壊危険量(棟/ヘクタール)+火災危険量(棟/ヘクタール))
地域危険度
5段階の相対評価。各ランクの存在比率をあらかじめ設定。危険量の大きい町丁目から順に割りあて。
ランク割り当ての比率
1 45・15% 2344町丁目
2 31・83% 1653町丁目
3 15・83% 822町丁目
4 5.55% 288町丁目
5 1・64% 85町丁目
ランク4、5の合計は7・2%ぐらい。ランク3以上は23%強で上位1/4ぐらいということになる。
中央区
※火災のあった月島二丁目はランク2。
参考 江東区
参考 建物倒壊危険度
兵庫県南部地震、新潟県中越地震、熊本地震(NEW)の被害データから算出した建物全壊率を使用
建物倒壊危険量(棟/ヘクタール)
=(①一般地盤の地域での地震動による建物倒壊量
+②大規模盛土造成地の地域での地震動による建物倒壊量
+③液状化が発生する地域での建物倒壊量)÷測定対象面積
※超高層建物の倒壊確率変更(第8回から)
大臣認定を取得、一定の安全性は確保されているとみなし「0」と設定
①一般地盤の地域での地震動による建物倒壊量
=町丁目の建物量
×一般地盤の地域の面積割合
×地域特性と建物特性を考慮した建物全壊率
臨海部は沖積層の厚さによる分類になる
沖積低地2 佃、月島、勝どき、豊洲6、有明1、2、4 【2・3】
沖積低地4 豊洲3 【2・9】
沖積低地5 東雲1、2 豊洲4、5 【2・9】
②大規模盛土造成地の地域での地震動による建物倒壊量(中央区、江東区は該当せず)
=町丁目の建物量×町丁目の盛土面積割合
×地盤増幅率の盛土割増係数
×地域特性と建物特性を考慮した建物全壊率
③液状化が発生する地域での建物倒壊量
※支持杭の有無に着目したもの。8階建以上のRC造、S造については支持杭が存在しなものは「0」とみなし、液状化による倒壊は生じないとしている
第8回調査からの建物倒壊危険量差分
※建物倒壊危険量そのものとしては月島全域で大きく改善している。低層木造住宅がマンションに変わったことなどが影響したのだろうか。
火災危険度
東京消防庁が実施した「東京都の地震時における地域別出火危険度測定・地域別炎症危険度測定)を活用。
第8回調査からの火災危険量差分
災害時活動困難係数
避難、消火、救助活動のしやすさを道路網の稠密さ、広幅員道路の多さなど道路基盤の整備状況に基づき算出
災害時活動困難係数
活動有効空間不足率
・建物内は活動友好空間に含めず
・町丁目の大部分を教育文化施設や集合住宅が占める場合にこれらの面積を活動有効空間として評価
総合危険度
総合危険量(棟/ヘクタール)
=(建物倒壊危険量(棟/ヘクタール)+火災危険量(棟/ヘクタール))
総合危険度ランク差分(第9回ー第8回)
月島3丁目は総合危険度ランクが2から4に上昇
月島3丁目の総合危険量
今回(第9回) 1・44(棟/ヘクタール)
建物倒壊危険量 前回比−0・07(棟/ヘクタール)
火災危険量 前回比−0・05(棟/ヘクタール)
災害時活動困難係数による変動量 前回比+1・14(棟/ヘクタール)
前回(第8回) 0・31(棟/ヘクタール)
※物理的危険量は減っているのに、災害時活動困難係数の影響で危険度が全壊調査の4倍以上になってしまっている。
5年後の次回発表の時には複数のタワーマンション建設の影響が出るエリアなので、改善はするのだろう。
感想・まとめ
災害時活動困難係数で月島三丁目は危険度4倍。なにこれ???とおもったが、奇しくも、月島で100㎡以上を焼いたものとしては30年ぶりの火災(月島二丁目)。人的被害はなかったようだが6棟焼いたという。消火作業などを見ていると、あながち変ということでもないのかなあ。