中央区のコミュニティバス「江戸バス」で実施される65歳以上一律無料化は過剰な優遇策なのではないかという疑問があり、収支率に与える影響を試算してみた。2020年度を基準に試算したところ、収支率は30%から20%に低下することがわかった。持続可能なのだろうか。これは南循環ルート変更による経費増加分3000万円を加味していない数字(2023/06/14)。
- 割引なしはバス運行の20区中13区、65歳以上無料は中央区のみ
- 中央区の65歳以上無償化は書面開催の会議で決定
- その他
- 江戸バス、65歳以上の利用者は全体の1/3(2021年)
- 江戸バス、65歳以上無償化で収支率20%に低下か
- 感想・まとめ
- 持続可能性に疑問
- 参考リンク等
割引なしはバス運行の20区中13区、65歳以上無料は中央区のみ
まず、23区のうちコミュニティバスを運行する20区での高齢者優遇策を各区のホームページから調べてみた。見落としはあるかもしれない。6割にあたる13区では区独自の高齢者優遇策はとっていなかった。
※江戸川区のコミュニティ交通実証実験分を追加。運行は6月30日終了
※豊島区IKEBUSは一律運賃半額実施。「割引なし」に分類。
(2023/06/27)。
内訳
割引なし 13区(豊島区含む)
70歳以上無料(都シルバーパス提示)3区
70歳以上無料(区発行乗車券提示) 1区
65歳以上半額(都シルバーパスも利用可能) 1区
65歳以上無料 中央区
運行なし 2区3区
事業者多数 3区
中央区の65歳以上無償化は書面開催の会議で決定
2023年4月7日の持ち回りの書面会議で決まってしまった。4月23日には統一地方選挙の区長選、区議会議員選挙が行われるタイミング。
その他
区から多額の補助を出すコミュニティバスは、地域で支えるものという趣旨の記述も複数の区で見られた。
江戸バス、65歳以上の利用者は全体の1/3(2021年)
利用実態に関する直近の資料は2021年のものがあった。アンケート回答者なので、厳密には利用者とは異なる。70代以上が22%、60代の半分を65歳以上としてこれが10%。合わせると32%で全体の1/3ということになる。
江戸バス、65歳以上無償化で収支率20%に低下か
65歳以上無償化で収入の3割が失われる(減収要因)=単純に全体に対する65歳以上の割合から算出。年パス利用もあるので、どの程度減少するのかは不明。
65歳以上を含む無償化経費=1000万円程度
この2つを踏まえ、直近2020年度を基準としてどの程度の収支率に変化が出るのかを試算してみた。
・収入は4546万円から3162万円に減少。
・支出は1000万円増えて1億5913万円に増加。
→支出に対する収入の割合(収支率)は30%から20%に悪化
(無償化経費が0の場合でも収支率は21・3%に悪化)
実際にはコロナからの回復があるので、もう少しいいと思う。
感想・まとめ
今の時代、65歳って一律に無料にしなければならないような高齢者だろうか。
大田区の「たまちゃんバス」は収支率50%切りで廃止
大田区の例をあげると、
収支率50%を割り込んだ場合は最大4年かけて改善計画策定
4年目収支率50%未満で廃止
収支率50%が妥当かどうかはわからないが、こういう基準を設けるのはとてもまともだと思う。
台東区の「めぐりん」は収支率40%で本格運行せず
台東区ではコミュニティバス「めぐりん」の検証運行の見直しの中で、収支率40%未満で本格運行しない、という基準をしめしていた。
荒川区の「町屋さくら」は収支率30%で廃止済
持続可能性に疑問
65歳以上無償化発表のタイミングは選挙対策を疑われるものだったが、そんなことより、最大の疑問は収支率20%の江戸バス、持続可能なの?ということ。
公費をじゃぶじゃぶ突っ込めば可能だろうけど、その価値はありますか?
あと、中央区の江戸バス65歳以上無償化には「地域で支える」という視点があまりにも欠落しているのではないか。
区長が変われば、削減対象になる可能性は高いんじゃないかな。
高齢者優遇のない13区に合わせりゃいいと思うよ。
参考リンク等
令和5年6月中旬から高齢者・障害者・妊産婦等に対して江戸バス運賃を無償化する方針。現時点における対象者数は、高齢者約25,700人、障害者約5,500人、妊産婦約5,120人。対象者に乗車券を一斉交付するため申請不要ですが、妊産婦は要申請。子どもが2歳に到達する前まで。https://t.co/TV8yRo1SkR pic.twitter.com/6gbYlqxKp6
— 山本 理恵 中央区議会議員 (@yamarie0324) April 10, 2023