都市交通の利便性向上や輸送力向上のため、1993年に計画された西武鉄道の西武新宿〜上石神井間の複々線化計画が2019年に廃止手続き入りした。近く都市計画の変更が告示されて手続きを終える。廃止は珍しいので、東京8号線に絡めて今回取り上げることにした。
複々線化計画はこの区間の地下化と高田馬場、新宿駅地下駅を設ける内容。廃止の主な理由はさまざまな対策により混雑率が恒常的に160%を下回るようになっていたため(2021/11/16)
計画概要
複々線化計画の当初目的
混雑緩和の抜本的な解決策として複々線化が計画された。
輸送力増強による混雑率緩和と所要時間の短縮を狙った
廃止内容
廃止に至る経緯
1993年 4月 都市計画決定
1995年 1月 事業延期表明(西武鉄道)
2019年 複々線化計画の廃止(都市計画の変更)
2020年10月 計画廃止案の縦覧実施
2021年 9月 関係各区への意見照会(終了)
今後 東京都都市計画審議会→都市計画決定&告示 ⇦いまここ
事業延期の理由(1995年)
輸送人員見通しの変更
事業費の高騰(当初1600億円→2900億円)
都市計画廃止の理由(2019年)
①混雑率の減少 190%超→160%程度に減少
※1999年以降は交通政策審議会の目標混雑率180%を大きく下回る状況が続いている。
②2016年の交通政策審議会答申に位置付けられなかった=学識経験者による客観的評価に基づく結果が出ている。都市計画廃止のきっかけの一つ(東京都見解)
③輸送力強化と速達性が向上した
・準急増発
・急行と準急の長編成化(8両→10両)
・特急増発、通勤急行の運行
・有料座席指定車「拝島ライナー」運行
・オフピーク通勤推進
参考:都市計画変更による代替事業 4駅での連続立体交差化追加
・上井草駅、上石神井駅、武蔵関駅、上石神井倉庫駅での連続立体交差事業が新規に追加される。
目的
・一体的なまちづくりの推進
・西武新宿駅〜上石神井駅間の線増線は都市交通の利便性向上と円滑化が一定程度図られたので都市計画は変更する
感想・まとめ
西武新宿線でかつて190%程度だった混雑率が低下を始め、184%まで下がった1995年、複々線化計画は延期が発表された。交通政策審議会目標混雑率(180%)を大きく下回る160%前後の状態がおよそ20年続き、2019年に複々線化計画は廃止手続きが動き出した。近く手続きが終わる。
地下に複線のルートを設けて全体として複々線とする計画を廃止する代替として、地上部分の既設ルートの連続立体交差事業が4本立ち上がっている。
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交通政策審議会の目標混雑率は180%だが、新型コロナの影響もあってメトロ東西線2020年度のピーク時混雑率は前年度から76ポイント減少した123%にとどまっている。果たして180%までもどるのだろうか。人口減少と新型コロナの影響で鉄道の事業環境は激変した。東京8号線開業への影響がどんな形になって出てくるのか、来ないのか。
その辺に注目したい。
三大都市圏における主要区間の平均混雑率・輸送力・輸送人員推移=国土交通省