2020年6月20日、3カ月ごとに発表される主要都市の高度利用地地価動向報告=地価LOOKレポートが発表された。このレポートは不動産鑑定士が全国100地区についての不動産市場の動向に関する情報を集めて地価動向を調べ、国土交通省でまとめたもの。
(国土交通省)
参考:直前の四半期
全体概要
今回は新型コロナウイルスの影響が含まれる期間なので、影響が注目されていたと思う。
全体概要(100地点)上昇 73地点(前回97地点)横ばい23地点(前回 3地点)下落 4地点(前回 0地点)変動率区分の下方変動は46地区首都圏概要(43地点)上昇 26地点(前回41地点)横ばい16地点(前回 2地点)下落 1地点(前回 0地点)下方変動は20地点全国住宅(32地点)上昇 23地点(前回31地点)横ばい 8地点(前回 1地点)下落 1地点(前回 0地点)下方変動は11地点
東京臨海部概要
▼佃・月島(0%横ばい 前期:0〜3%上昇)
(現況)変動率区分が下方変動
当地区は銀座等の都心への優れた接近性を備えるとともに、東京タワーや東京スカイツリー等のランドマーク施設や河川等に囲まれた変化に富んだ眺望が得られることから、分譲・賃貸ともに高層マンションの需要が強い。「中央区基本計画2018」によると、当地区では今後10年で人口が約1.5倍に増加することが見込まれており、また、地区計画では良質な都心生活地としての複合市街地の形成を目的とした土地利用が求められており、当地区はさらなる発展が期待される。当地区における新築マンション及び中古マンションの売買取引は、新型コロナウイルス感染症の影響により停滞しているが、マンション分譲価格については横ばいで推移している。マンション開発素地については、デベロッパー等の素地に対する需要は継続して強いが、新型コロナウイルス感染症の影響による取引の停滞等の懸念から、取引利回りは横ばいとなり、当地区の地価動向は横ばいで推移した。
(前期現況)
当地区は銀座等の都心への優れた接近性を備えるとともに、東京タワーや東京スカイツリー等のランドマーク施設や河川等に囲まれた変化に富んだ眺望が得られることから、分譲・賃貸ともに高層マンションの需要が強い。「中央区基本計画2018」によると、当地区では今後10年で人口が約1.5倍に増加することが見込まれており、また、地区計画では良質な都心生活地としての複合市街地の形成を目的とした土地利用が求められており、当地区はさらなる発展が期待される。湾岸エリアでは新築分譲マンションの大量供給が控えているため、その影響を懸念する声も聞かれるが、マンション購入資金の融資環境が良好であること等が下支えとなり、新築マンション市況は好調である。中古マンションは一定数の在庫を抱えているが、取得意欲は旺盛な状況が続いており、高価格水準を維持している。再開発等による高層マンション開発の計画が地区内外で見られ、デベロッパーによるマンション開発素地需要は強く、取引利回りは低下傾向で推移しており、当地区の地価動向はやや上昇で推移した。
(今後)
BRTのプレ運行や環状2号線の整備等の都市基盤整備による利便性の向上が期待され、こうした背景からマンション市況は好調を維持すると予想される。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響で、取引停滞等の懸念については先行きが不透明で、このような市況の変化が今後の地価動向にどのような影響を及ぼすかについては注視が必要である。
(前期の今後)
東京五輪開催日が近づきBRTのプレ運行が予定され、環状2号線が整備させる等、都市基盤整備による利便性の向上が期待され、再開発事業や五輪関連施設の建設も進んでいる。こうした背景からマンション市況は好調を維持し、将来の地価動向はやや上昇が続くと予想される。
▼豊洲(0〜3%上昇 前期:0〜3%上昇)
(現況)
当地区は、他の湾岸エリアと同様に需要者の購入意欲が底堅いエリアであることから、新築分譲マンションについてはマンション分譲価格上昇の動きが見られ、中古マンション市場においても取引価格は安定している。また、豊洲駅前の再開発地区に存する大規模商業施設の増床は、周辺のマンション市場にとって前向きな材料となっている。新型コロナウイルス感染症の影響による取引の停滞等の懸念があるものの、マンション開発素地の供給が極めて少ないこと等からデベロッパー等の素地に対する需要は継続して強く、取引利回りはやや低下傾向で推移していることから当期の地価動向はやや上昇で推移した。
(前期現況)
当地区は、マンション価格上昇の動きが一時期と比較して一段落する様子を見せていたものの、他の湾岸エリアと同様に需要者の購入意欲が底堅いエリアであることから、新築分譲マンションについては、マンション分譲価格上昇の動きが見られる。中古マンション市場においても需要者の購入意欲は底堅く、取引価格は安定している。湾岸エリアで大量供給が開始された分譲マンションの販売状況は良好であり、マンション開発素地の供給が極めて少ないこと等からデベロッパー等の素地取得意欲は継続して強く、取引利回りはやや低下傾向で推移している。また、豊洲駅前の再開発地区では大規模商業施設の増床が決定しており、周辺のマンション市場にとっても前向きな材料となっている。このような状況から、当地区の地価動向はやや上昇で推移した。
(今後)
当地区は、利便性の高さからマンション需要は底堅く、当地区内の買換え需要を中心に当該需要は引き続き安定的に推移すると予想され、優良なマンション開発素地に対する需要は堅調な状況が持続すると見込まれる。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響で、取引停滞等の懸念については先行きが不透明で、このような市況の変化が今後の地価動向にどのような影響を及ぼすかについては注視が必要である。
(前期の今後)
当地区は、利便性の高さからマンション需要は底堅く、当地区内の買換え需要を中心に当該需要は引き続き安定的に推移すると予想され、また、豊洲駅前の整備等を背景に今後もマンション需要の強まりが期待できることから、当地区の将来の地価動向はやや上昇と予想される。
▼有明(0〜3%上昇 前期:0〜3%上昇)
(現況)
当地区では、マンション分譲価格上昇の動きが一段落しているものの、都心部に近いエリアと比較して相対的に割安感があり、地域の将来性も期待できること等から、マンション需要は堅調に推移している。こうした要因はマンションの賃貸需要にも影響しているが、一方で賃貸物件の供給量は限定的であることから、マンション賃料は上昇傾向にある。建築費は高水準にあり、また当地区周辺の湾岸エリアを含めて引き続き分譲マンションの大量供給が控えている等の懸念材料もあるが、当地区は国家戦略特区の認定を受けた大規模開発事業や東京五輪関連施設等の工事が進捗し急速な発展を遂げつつあり、また、環状2号線の開通や銀座と有明を結ぶ地下鉄構想により都心部へのアクセス性向上が見込まれている等、その将来性を見据えデベロッパーのマンション開発素地取得意欲は強い状況にある。こうした背景から、当期前半の地価は前期同様に推移したが、後半は新型コロナウイルス感染症による一時的な経済活動停滞等の影響により減速し、当期の地価動向はやや上昇で推移したものの上昇幅が縮小した。
(前期現況)
(今後)変化なし
当地区の将来性を背景に、中長期的にはデベロッパーの開発素地取得需要は堅調に推移することが見込まれるが、新型コロナウイルス感染症による経済打撃や東京五輪開催延期が不動産市場へ与える影響の程度は不透明であり、今後の地価動向については注視が必要である。
(前期の今後)
今後も東京五輪開催や将来性を背景にデベロッパーの取得意欲は強い状態が続くと見込まれることから、将来の地価動向はやや上昇傾向が続くことが予想される。
参考:横浜市中区元町(0〜3%下落 前期 0%横ばい)
首都圏で唯一下落に転じた地点を参考に示しておく。
(現況)
当地区は知名度の高い商業地域で優れた集客力を維持しているものの、メインストリート沿いの路面店舗等に空き店舗が目立つようになってきている。平成30年以降、メインストリート沿い及びその背後においては売買事例が顕在化しておらず、当期においても確認できなかった。空き店舗は石川町駅に近接した4・5丁目に多く、その中の一つの建物が取り壊され、分譲マンションの建築が予定されている。今後、この傾向が続くか否かは、空き店舗が多い築古のビル等の状況を注視して判断する必要がある。新型コロナウイルスの影響等により経済活動が停滞するなか、ファッション等を中心とする元町商店街においては、売上が減少しており、このような収益性の低下から店舗賃料は下落傾向に転化し、当期の地価動向はやや下落で推移した。
(今後)
現時点で、新型コロナウイルスの影響により閉鎖された店舗はない模様だが、今後の収益性回復の可能性については先行きは不透明であり、このような市況が今後の地価動向にどのような影響を及ぼすかについては注視が必要である。
感想・まとめ
本来なら5月下旬に発表されているはずのレポート。定点観測の3地区のうち、佃・月島の変動率区分が下方変動した。また、3地区のいずれも新型コロナの影響がどの程度になるか不透明という記述がある。
本エントリには盛り込まなかったが、青海・台場や武蔵小杉でも変動率区分の下方修正が見られた。いずれも新型コロナの影響で、先行きが不透明という内容。
・・・
それでも、思ったよりも大きな変化はなかった印象。新型コロナの影響が地価に反映されるには少しのタイムラグが出るはずなので、次回秋のレポートは大きな変化が出るかもしれない。ということで注目。