東京都下水道を改良型の分流式で更新を続けた場合と分流式で置き換えた場合にどれぐらいのコスト差が出るのかを示した報告書が2017年に東京都下水道から発表されている。その差は実に15倍。分流式に置き換えていくと毎年2250億円必要で、合流式から分流式への大規模な置き換えは現実的ではないという見解が示されている(2023/06/04)。
- 合流式下水道と分流型(改良型)下水道について
- 合流式と分流式
- 分流式を新設した場合の課題
- 分流化整備は2250億円/年必要 合流式は150億円/年
- そのほか
- 参考 晴海地区、豊洲地区、の下水道幹線について
- 感想・まとめ
- 参考リンク等
合流式下水道と分流型(改良型)下水道について
合流式と分流式
家庭・工場からの「汚水」/「雨水」を合わせて下水という。
①合流式 「汚水」と「雨水」を1つの下水管で集め、水再生センターまで運ぶ
②分流式 「汚水」と「雨水」を別々の下水管で集め、雨水は河川、海に流し、汚水は水再生センターまで運ぶ
③合流式の改善 降雨初期の特に汚れた汚水を貯留施設にためて、その後水再生センターの処理能力を超える雨水と汚水は河川や海に流す方式。特に汚れた汚水は降雨後に水再生センターで処理
※東京都区部の82%は「合流式」で18%は「分流式」
晴天時の3倍超す汚水は水再生センターで処理できない
※3Qまでは水再生センターへ。
分流式を新設した場合の課題
分流化整備は2250億円/年必要 合流式は150億円/年
分流化のための施設整備を行う場合
・多額の事業費が必要
・東京都の道路事情などを踏まえると雨水と下水を分ける下水道管を1本新設することは困難
・宅地内で汚水と内水を分ける必要があり、顧客負担が増加
・2023年の下水道法施行令への対応が困難(※)
参考 2023年の下水道法施行令への対応
2014年4月に下水道法改正施行令が施行されていて、10年間の猶予期間付きで次の内容を規定
・雨天時に下水を公共用水域に放流する吐口からの放流水量を減少させられるように、適切な高さの堰の設置、その他の措置が講じられていること
・雨水の影響が大きい時の放流水の水質基準を規定すること(分流式下水道の雨水水質と同程度の水質に)
そのほか
仮に東京都区部で分流式が広がったとしても、他県の河川上流部流域が改善されないと、水質は改善しないという話があって、東京2020大会の時にお台場のトライアスロン会場の水質問題の中で話題になったと記憶している。
参考 晴海地区、豊洲地区、の下水道幹線について
・調べてみたところ、中央区の分流式エリアとなっている晴海地区の汚水幹線はこんな感じ。雨水管は別になっている。
感想・まとめ
現在合流式のところをコストが非常にかかる分流式に置き換える金はない、ということになる。最初から分流式にできた場所とは違う。
結果として、低コストでも大雨時以外は比較的良好な水質が維持される「貯留施設付き合流式」に落ち着いている、という感じだろうか。
それなりに改善されている。
2023年度の合流式下水道改善予算は127億円。下水道局で毎年2250億円(2017年当時)のコスト負担は現実的ではないよね。
・・・
下水道整備はとても金がかかるもので、浸水被害の軽減や伝染病予防などが目的の一つで、とにかく整備が急がれた。その面での機能を発揮しているので、大雨時の「糞尿漏れ」ぐらいは我慢しましょうか。
個人でできる対策としては、
大雨が降りそうなら降り始めぐらいまでにトイレを済ませておく。大雨が止んだ後は、少し時間を置いてから経ってからトイレに行く。
健康のために無理のない範囲で。
これで、多少マシになるのではないかな。