2022年4月19日に改正道路交通法が成立し、16歳以上の場合、免許なしで電動キックボードに乗れるようになる見通しとなった。
施行は2年後の見込み。今回の改正法では「運転」とは別に「特定自動運行」という言葉が出てきたり、「原動機付自転車」の中に免許不要な「特定小型原動機付自転車」という区分ができたりと結構変更点が大きい。
審議資料を見ると、電動キックボードに関し、歩道通行可能としたり免許不要とすることに有識者委員会で否定的な意見が多かったのが目についた。改正法との間にかなりの乖離があるように思った。(2022/04/20)。
道路交通法の一部を改正する法律案(2022年3月4日国会提出)概要
1 特定自動運行に係る許可制度の創設
「特定自動運転」:運転者がいない状態での自動運転(レベル4相当)をしようとする場合都道府県公安委員会の「許可」を受けなければならない
2 新たな交通主体の交通方法等に関する規定の整備
1 特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)の交通方法等
「特定小型原動機付自転車」:最高速度、車体の大きさが一定の基準に該当する車両
・運転免許を要しないが16歳未満の運転禁止
・ヘルメット着用は努力義務
・車道通行が原則
・道路左端側に寄って通行
・一定の速度以下に最高速度が制限され、それに連動する表示がなされているものは例外的に「自転車通行可能な歩道等」に限り通行が可能。
・交通反則通告制度と放置違反金制度の対象(青切符の対象)
・危険行為を繰り返すものに対しては講習受講を命じる
※議論の過程では「小型低速車(15-20km/h以下)」に該当か
有識者委員会の意見概要
意見というよりは懸念概要。
・自転車の歩道徐行も守られていない、電動キックボードを自転車と同じ扱いにすると同様に無秩序になる懸念。
・歩道走行に反対
・免許制度は必須
・ヘルメットの着用は必須。
・ヘルメット着用は自転車と同等とすべき
・定格出力の上限を設けるべき
2 遠隔操作型小型車(自動配送ロボット等)の交通方法等
「遠隔操作型小型車」:遠隔操作により通行する車で、最高速度や車体の大きさが一定の基準に該当するもの
・歩行者同様の交通ルール(歩道、路側帯の通行、横断歩道の通行等)を適用
※議論の過程では「自動歩道通行車」に該当か
3 運転免許証と個人番号カードの一体化に関する規定の整備
・希望者には運転免許情報を個人番号カードに記録できる。
・自動車等を運転時には、運転免許情報の記録された個人カードか運転免許の携帯が必要
4 そのほか
・全ての自転車運転者に対する乗車用ヘルメット着用の努力義務
・バス停などにおける駐停車禁止の規則から除外する対象を拡大
参考 LUUPの取り組み
電動キックボードのシェアリング事業を展開するLUUPは、今後「販売事業」を展開する方向性を早速示している。
まあそうだよね。
感想・まとめ
施行は「特定自動運転」に関しては今年度中で、電動キックボードを含む「特定小型原動機付自転車」や「遠隔操作型小型車」は2年以内となるようだ。
・・・
電動キックボードに関して、有識者委員会の意見(歩道通行反対、免許は必須、など)はあまり反映されなかったようだ。
報告書に示された調査結果では、歩道通行が良いと思わない人が6割で、そのうち9割が理由を歩道通行が危険だとした。また、歩道通行が良いと思う人が4割で、そのうち免許を持つ6割が車道走行が危険と指摘している。事業者にはこうした懸念の払拭が求められるだろう。
参考:電動キックボードについて(有識者報告書より)
・歩道を通行して良いと思うか(N=2236)
良いと思う 41%、良いと思わない 59%
・・・
中央区佃を中心に実験が続くラクロなどの自動ロボットは「遠隔操作型小型車」として「歩行者」と同じ交通ルールが適用されるというのはわかりやすい。運営者のZMPは乗り捨て、無人配送などが想定されていない現行法の問題点を指摘していたのが目を引いた。
参考
多様な交通主体の交通ルール等のあり方に関する有識者検討会報告書 2021年12月(警察庁)