どらったら!!

東京都中央区、江東区の臨海部を中心としたメモ。独自の情報を除いては、報道ベースではなく、発表主体の情報をベースに書くことを基本にしています。最近はゲリラ的な花火大会情報も提供。

#2180 非居住者対応と終末期対応に注目 神戸市のタワマン有識者会議報告書 2025年1月

人口減少社会を見据えた持続可能なまちづくりとして、タワーマンション建設により変化する周辺地域の現状を分析し、対応を検討する神戸市の有識者会議が2025年1月8日、課題と対応策をまとめた報告書の暫定版を発表した。非居住者への対応と解体コストへの対応の項目が目を引いた(2025/01/14)。

神戸市有識者会議

有識者会議の目的

 市内タワーマンション(64棟(高さ60m以上))の特性分析、課題・リスクの洗い出し、将来的に見込まれる行政コストと負担のあり方について検討

タワーマンションのあり方に関する課題分析

・区分所有者の属性の多様化により合意形成が困難

修繕積立金不足により将来的に廃墟化の懸念

・災害への対応

・都市部への人口集中

・急な住民増加による学校等のインフラの不足

神戸市のタワマン関連施策

・タワマンの建設抑制(都市機能誘導地区)

・マンションの管理状況の届出・情報開示

・マンション管理計画認定制度

タワーマンションの特性

高層階の部屋になるほど、

 住民の平均所得が高い

 住民登録のない部屋の割合が高い

 所有者がそこに住民登録を置く割合が低い

→階層ごとの居住者属性が大きく異なるため区分所有者間の合意形成が難しくなることが想定される

階層ごとの平均年収(第2回資料より)

神戸市有識者会議

所有者の属性(第2回資料より)

神戸市有識者会議

タワーマンションの固定資産税(家屋)

神戸市有識者会議

マンション管理に関する問題(第3回資料より)

・階層によって所得に差。修繕積立金の引き上げに耐えられない居住者が出る可能性

・マンション管理届出の義務化検討が必要

タワーマンションを投資やセカンドハウスとして所有する所有者への対応

・非居住者が増えると、修繕や解体の際の合意形成がさらに困難になる

床面積1坪あたり解体費用

RC造  4〜8万円/坪(1万坪で4億〜8億円)

SRC造 4・5〜10万円/坪(1万坪で4・5億〜10億円)

対応の方向性

インセンティブ、ディスインセンティブの付与を通じて適切な管理を促し、長寿命化を促進する

想定される対応策(報告書より)

マンションの管理状況を把握するためには、届出の義務化は有効な手段であり、検討を行うべき
届出の実効性確保のためにも、義務化の検討に併せて、現在の届出内容や公表内容、管理組合に対する情報提供等について精査が必要

非居住者に関する課題

タワーマンションの上層階では空き部屋が多くなる傾向にあるが、居住目的で取得を希望する者が適正価格で取得できず、貴重な住宅ストックが活用されていない可能性

・空き部屋が増えてくると修繕や建て替えの際の意思決定に悪影響を与える可能性

・マンションの空き部屋には空き家特措法での対応が困難

対応の方向性

・大規模マンションの空き部屋の有効活用を促進していく

想定される対応策(報告書より)

・空き部屋の発生・増加を抑制するとともに、適正管理を図り、空き部屋の有効
活用を促進するため、タワーマンションの空き部屋所有者に対し、一定の経済的
な負担を求めることが考えられる

・負担の求め方としては、タワーマンションの区分所有者が修繕積立金を十分に積み立てすることが難しい現状を考慮すると、負担金よりも、法定外税の創設により負担を求めることが適当
非居住であっても、ごみ処理や消防・防災、公共施設整備といった一般的な行政需要は生じており、居住する所有者に比べると、非居住物件の所有者はこのような行政需要に対する負担を免れていると考えられることから、新税による追加の負担を求めることは、こうした行政需要に対する受益と負担の関係を担保することにも資する
・法令上、所有者はタワーマンションに「住む義務」がなく、「住んでいない」ことだけをもって、所有者に対して負担を求めるのが適切なのか、という慎重意見

法定外税検討の課題

・納税義務者の範囲

 まずは都心機能誘導地区内のタワーマンションに限定

 大規模マンションまで対象に含める場合は規模の線引きについて検討が必要

課税標準の設定

・税率

・課税対象の確定(何をもって空き部屋とするか)

・課税対象の補足方法(空き部屋の発生をどうやって把握するか)

・徴収した税収の使途

 マンション管理行政。都心部のバランスの取れたまちづくりの財源(検討)

都心でバランスの取れたまちづくりを推進するための政策誘導

・都心機能誘導地区内は生活関連の行政インフラが脆弱。タワーマンション等の大規模マンションの新築がなされた場合、対応の困難が予想される

・大規模マンションが林立すると、都心居住の傾向に拍車がかかり、都心の商業・業務機能が阻害される

・とりわけタワーマンションは将来的に廃墟化(廃棄物化)の懸念がある。廃墟化が起きた場合に街の魅力に与える影響は甚大

対応の方向性

・周辺インフラ等に影響の大きいタワーマンション等の大規模マンションに対して、さらなる抑制を図る

想定される対応策

・都心における行政インフラへの負担抑制、都市機能と居住機能のバランスの維持等を目的に、都心機能誘導地区内におけるタワーマンションの新規建築を抑制する政策税制として、その建築主に対し法定外税の負担を求め、税収を都心における商業・業務機能の発展のためのインセンティブ施策の財源に充てることも選択肢の1つではないかとの意見

・導入効果が未知数(アナウンス効果のみとなる可能性)、モラルハザード(税を払えば建てられる、税分のコストは購入者に転嫁すればよい)を生むおそれがあるといった多くの懸念

終末期への対応

「終末期(解体)のコスト負担の議論も必要。所有者責任が原則だが、デベロッパーから負担金を取る可能性を含め議論しなければ、行政が負担せざるを得ない状況になってしまう恐れがある」

感想・まとめ

 特に、非居住者への対応や終末期への対応など、将来避けては通れない問題として、全国に先駆けて神戸市で行われている議論は注目に値する。

 神戸市はタワーマンションの廃墟化を防止する取り組みについて「その持てる方法の全てを総動員して対応していく必要がある」としており、極めて重要な施策に位置付けている。具体的には規制のほか、補助金(税優遇)、税制、負担金などの負担を求める方法など、あわゆる施策を組み合わせる必要があるという。

 我が中央区も、ホイホイ建設を認める時期は過ぎたように思う。タワーマンションの老朽化(廃墟化とは言わないが)については、本腰を入れて対策を検討すべき段階に来ているのではないか。

参考リンク等

www.city.kobe.lg.jp