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東京都中央区、江東区の臨海部を中心としたメモ。独自の情報を除いては、報道ベースではなく、発表主体の情報をベースに書くことを基本にしています。最近はゲリラ的な花火大会情報も提供。

#2234 日本の気候変動2025をみる 最大潮位偏差の拡大、浸水リスク上昇と平均海面上昇

気象庁が日本の気候変動に関する2025年版の報告書を公表したので、内容を簡単に見ておく。5年ぶりの更新。詳細版は392ページ(2025/03/27)。

気象庁

概要

1 はじめに

前回「日本の気候変動2020」から改善した点

IPCC第6次評価報告書など最新の科学的知見と成果を反映した。

観測結果は最新(〜2024年)までデータを延長

将来予測は最新の気候モデルを用いた結果を使用

極端現象の将来予測に関する情報を新たに掲載

2 気候変動に関する諸要素の変化と日本における変化のまとめ

・大気中の温室効果ガス濃度は増加継続。増加すると大気からの下向き赤外放射量が増加

・下向き赤外放射の増加により地上の気温は上昇

・日本国内では猛暑日といった極端に暑い日が増加

・極端な大雨の発生頻度や強度は増加するが、雨の降る日は減る

・日本国内では降雪量、積雪量が減少する地域が多いが、極端な大雪時の降雪量が増加する可能性がある

・海面水温は上昇する

・日本付近の台風強度が強くなる可能性がある

・長期的に海面水位は上昇する。オホーツク海の海氷は減少する

・台風強化により、接近・上陸時にはより深刻な高潮・高波が引き起こされる可能性。浸水リスクが大きくなることが危惧される

・海水の水素イオン濃度が低下(海洋酸性化)

日本における変化まとめ

気象庁

3 温室効果ガスの大気中濃度は増加を継続している

気象庁

 二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素濃度は過去80万年間で例のない水準(変化なし)

4 平均気温上昇と極端な高温の頻度が増加している

気象庁

 世界平均気温は工業化以前の水準よりすでに1度以上上昇

 日本の年平均気温上昇率は世界平均より高い

 日本国内では真夏日猛暑日、熱帯夜等の日数は増加、冬日は減少している

 都市域では「地球温暖化」+「都市化」により気温の上昇率が高くなっている

4−2 【将来予測】平均気温の上昇と極端な高温の発生頻度・強度の増加が見込まれる

・いずれの温室効果ガス排出シナリオにおいても日本の年平均気温は上昇(確信度が高い)。

・これにともない、日本における多くの地域で猛暑日や熱帯夜の日数増加が予測される(確信度が高い)

4度上昇シナリオ(RCP8・5)

 年平均気温 4・5度±0.6度上昇

 猛暑日日数 17・5日±5・0日増加

 熱帯夜日数 38・0日±6・6日増加

 冬日日数  46・2日±6・5日減少

・4度上昇時には工業化以前の気候で100年に1度だった極端な高温がほぼ毎年発生されると予想される

気象庁

5 日本国内の大雨/短時間強雨の発生頻度が増加している

・国内の極端な大雨の発生頻度は増加。強い雨ほど増加率が高くなっている

・雨が降らない日も増加(100年あたり9・2日の増加率)

・年間の総降水量は過去130年で変化傾向は確認できない

気象庁

5−2 【将来予測】今後も雨の振り方が極端になる傾向が続くと予想される

気象庁

・いずれの温室効果ガスの排出シナリオにおいても、極端な大雨の発生頻度は全国平均では増加すると予測される(確信度が高い)

・将来の日本の年降水量に確かな変化傾向は見られない(確信度は中程度)

※地球温顔化の進行に伴い線状降水帯の発生頻度と強度が増加すると指摘する研究はあるが、知見が十分ではなく、さらなる研究が必要

4度上昇シナリオ(RCP8・5) 21世紀末の雨の振り方の変化

1時間降水量50ミリ以上の短時間強雨の頻度 約3・0倍

年最大日降水量の変化 約27%(約28ミリ)増加

日降水量が1ミリ未満の日の年間日数 約9・1日増加

・初夏の梅雨前線による降水帯は強まると予測される(確信度は中程度)

6 日本国内の雪は減少傾向が現れている

日本海側の各地域では年最深積雪に減少傾向が現れている

日本海側の各地域では大雪の頻度も減少傾向が現れている

6−2 【将来予測】降雪・積雪は減少すると予測される

・4度上昇シナリオでは、年間降雪量、積雪量は全国的に減少が予測される(確信度は高い)

・一部地域では極端な大雪時の降雪量が増加する可能性はある(確信度は中程度)

7 猛烈な台風が増加しているという研究結果もあるが十分に評価できていない

IPCC第6次評価報告書では1980年代半ば以降、猛烈な台風の発生数は増加(確信度は中程度)。ただ、十分に評価できていない。

・1951年以降、台風の発生数、日本への接近数に長期的な変化傾向は確認できない

・日本付近の台風は強度が最大となる緯度が北に移動している可能性が高い

7−2 【将来予測】 日本付近の台風は強まると予測される

・日本付近の台風強度は強まり、台風に伴う降水量も増加すると予測される(確信度は中程度)。これは地球温暖化に伴う水蒸気量の増加は海水温の上昇が影響するためと考えられる

8 日本近海の平均海面水温は世界平均の2倍を超える割合で上昇

気象庁

8−2 【将来予測】日本近海の平均海面水温は今後も上昇をし続けると予測される

気象庁

9 日本沿岸の平均海面水位は1980年以降上昇傾向にある

・世界平均海面水位は1960年代後半以降加速。2006〜2018年では1年あたり3・7ミリの上昇(確信度は高い)

・日本沿岸の平均海面水位は、1980年代以降上昇傾向。地盤上下変動を補正したデータでは2004年から2024年に1年あたり3・4ミリ上昇

9−2 【将来予測】日本の平均海面水位は上昇すると予測される

気象庁

・日本沿岸の平均海面水位は21世紀中に上昇し続けると予測される(確信度が高い)

・4度上昇シナリオの下では0・68m上昇すると推測される

・海面水位上昇により浸水災害リスクが増加すると予測される

10 オホーツク海の海氷面積は減少している

オホーツク海では10年あたり3・2%の割合で海氷域が消失

・網走では流氷初日は10年あたり1・3日遅くなり、流氷終日も10年あたり3・6日早くなる傾向

10−2 【将来予測】オホーツク海の海氷面積は今後も減少すると予測

4度上昇シナリオ(RCP8・5) 21世紀末の海氷面積 

 オホーツク海 20世紀末と比べ 78%±21%減少する

 北極海 21世紀末までに夏季にはほぼ海氷がなくなると予測(確信度は高い)

11 日本の高潮の発生頻度に変化傾向は見られない

・高波の波高は世界の広い海域で高まる傾向が見られる

11−2 【将来予測】高潮のリスクは増大すると予測される

気象庁

熱帯低気圧の将来変化が高潮の将来変化を引き起こす(確信度は低い)

東京湾、大阪湾、伊勢湾の最大潮位偏差は平均的に0・5〜1・5m上昇すると見込まれる(確信度は中程度)

・大阪湾では小規模な高潮の発生頻度は減るものの、よりまれで大規模な高潮の発生頻度は増加すると予測される(確信度は低い)

・日本沿岸では平均波高は低くなると予測される(確信度は中程度)

※21世紀末において、南北方向の気圧勾配と風速の減少に伴い10%程度減少すると予測される。

12 北西太平洋、日本沿岸域とも海洋酸性化が進行している

 世界 pHは10年あたり0・02の速度で低下

 日本 pHは10年あたり0・022の速度で低下

12−2 【将来予測】海洋酸性化が今後も進行すると予測される

気象庁

感想・まとめ

気象庁

自然災害に関する最新の留意事項として、こうした資料を確認しておくことには意味があると思う。

参考リンク等

www.data.jma.go.jp