2025年2月25日、茨城県がつくばエクスプレスの茨城県内延伸構想に関する事業計画素案を公表した。延伸は土浦方面、JR常磐線とは土浦駅で接続する構想について、採算性、費用対効果などを茨城県が再計算したもので、茨城県は費用便益比B/Cが1を上回り、27年で累積資金収支が黒字になると主張したが、用いたモデルは前提条件のかなりの部分が従来のものと異なるようだ(2025/02/25)。
素案における試算の概要
可能な限りの最短経路、中間駅は1駅、JR土浦駅近くに仮称・新土浦駅設置
計画区間 つくば〜新土浦(所要時間 約9分)
運転本数 つくば駅発着の全列車が乗り入れる 運賃340円
計画延長 約10キロ
概算事業費 約1320億円
開業目標 2045年
今後の進め方
2024年から2030年ごろまでがフェーズ2(調整と磨き上げ)となっていて、延伸計画素案のブラッシュアップをするということらしい。
その後に続く2045年ごろまでのフェーズ3で「事業主体となる鉄道事業者等と共同して延伸事業の許可取得を目指す」となっている。
参考 TX延伸の整備効果の検討結果比較表
試算モデルでどう変わる?
従来法(四段階推計法:国交省交通政策審議会答申第198号)と応用都市経済モデルを比較するとB/Cは約2倍の差が出ている。
中央2列がその差を示しているので細かく見ていくと
1 将来人口の設定が異なる
従来 第二次茨城県総合計画
今回 社人研2023年推計
2 延伸区間の輸送人員(つくば~新土浦)
従来 1日1万人
今回 1日2・2万~2・5万人
3 費用便益比(B/C)
従来 0・83
今回 1・60[3・33:乗用車利用者便益を加味]
4 便益
従来 496億円
今回 962億円
5 採算性
従来 発散
今回 43年(累積資金収支黒字転換年)
感想・まとめ
これまでの「絶望的」なシミュレーションを、期待の持てる形に上書きしたもの。
今後、茨城県はこの試算をベースに構想の実現を目指すことになるだろう。
ただ、この素案を見る上では注意が必要。
1点目は、茨城県が従来のモデルからパラメーターをある意味で「いじった」ものであること。従来との差がかなり大きい。輸送人員が2・2~2・5倍というのは納得しがたいものがある。
2つ目は、本構想そのものが、国の交通政策審議会に諮られていないこと。次回の交通政策審議会がいつになるかは分からないが、スタートラインはそこになるのではないか。迫る人口減少との競争はシビアなものとなる。
さらに試算の条件についても、運輸政策審議会答申18号の2000年度までに開業することが適当な「A1」路線、2000年度までに着工することが適当な「A2」路線の全通を示唆するような内容が含まれていることや、前提条件がはっきり示されていないものがあることなど、不透明な部分が見られる。
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延伸を希望するからには、どこかの時点でまとめておくことが必要であることは理解するが、現時点では積極的な評価はできないというのが感想かな。本件の詳細情報ががあれば更新したい。