東京都交通局が経営計画2025(案)を公表した。燃料電池バスの百台導入は2027年度となる見込み。EVバスも10台程度導入するとしている。(2025/02/14)。
東京都交通局経営計画2025
計画期間 2025年度〜2027年度
事業環境と課題
1 公共交通の担い手不足
→職員確保は一層厳しさを増す見込み。入札不調が増加する中、工夫を凝らした発注が必要
2 需要構造の変化
・東京都全体では2040年をピークに、区部では2045年をピークに人口減少へ
・鉄道の定期利用による乗客数は生産年齢人口の減少とリモートワークの定着で今後もコロナ前のの水準には回復しない見込み
→沿線地域との連携などを通じ、移動需要を積極的に喚起する必要
・2023年に過去最高を記録した東京を訪れる外国人旅行者はさらに増加する見込み
3 物価高騰
・資源価格上昇と円安進行で2022年度の交通局の燃料費・電気料金は前年度比41%増加(24億円増加)。今後も物価上昇、労務単価、金利上昇が見込まれる
→安定的事業運営を図る必要
4 世界的な気候変動
・環境優位性の高い公共交通の利用促進、エネルギー利用の効率化、再生可能エネルギーの導入拡大、豪雨対策強化などが必要
5 自然災害の激甚化
→都市型水害、荒川氾濫等大規模水害、首都直下地震、富士山噴火等への備えをこうじる必要
6 技術革新の進展
→これまで困難だった課題解決、革新的サービスの創出に新たな技術やスタートアップの斬新な発想を積極的に活用する必要
交通局における運輸系職員の状況
・全職員の6割以上が50台以上
・採用選考の応募倍率の推移
自動車運転(バス) 7倍台(2015年度)→2倍台(2024年度)
交通技能(自動車整備) 6倍台(2015年度)→0・9倍(2024年度)
計画期間における具体的な取り組み
地下鉄駅
2027年度目標
5駅で新設エレベーターを供用開始
トイレの改修(一部駅に残る和式をグレードアップに合わせ洋式化)
ホームと車両の段差・隙間の縮小 浅草線での対策終了
地下鉄車両
2027年度目標
大江戸線8編成更新終了
2029年度目標
三田線11編成更新完了
そのほか
大江戸線の車内騒音低減 曲線走行時の低減に向け操舵台車の本格導入に向けた検討を進める
バス
2027年度目標
上屋 新設45棟・老朽化対応150棟/ベンチ 90基整備
情報案内の充実
2026年度目標
地下鉄(全駅で完了):翻訳対応透明ディスプレー/スマートフォンを活用したお客様案内/地下鉄駅案内サイン改修
目標年次表記なし
バスの旅客案内の充実;運行情報/車内中央部次停留所名表示装置/多言語案内支援
交通局HP、都営交通アプリの充実
輸送需要への対応
ダイヤ等の見直し
日暮里舎人ライナー300形車両4編成の座席ロングシート化に向けた準備
地下鉄12号線(大江戸線)大泉学園町方面への延伸 検討を深める
新たな乗車サービスの導入
2025年度目標
地下鉄全駅でクレジットカード等での乗車サービス導入 外国人旅行者等の利便性向上
継続
地下鉄サービス一体化への取り組み。東京メトロとの企画継続
浅草線3駅改装
2027年度目標
周辺まちづくりとの連携
目標年次記載なし
新宿駅西南口地区の再編 「新宿駅西南口開発計画」に伴う駅出入口のリニューアル
都営バス新宿支所周辺の再開発 「西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業」の参画に伴いバス営業所リニューアル
災害対策強化
2027年度目標
浸水対策実施(駅出入口20箇所完了、通風口21箇所完了)
地震対策 耐震補強整備率57%
老朽化した施設・設備の維持更新
2027年度目標
大江戸線の信号保安装置の更新に合わせ、無線式列車制御システム(CBTC)を導入
バスのZEV化の推進
2027年度目標
燃料電池バス累計100両導入(2024年度末で80両)
目標年次表記なし
EVバスは計画期間中に10両程度の導入を目指す(2025年度に影響運行開始)
経営の見通し
都営地下鉄
・老朽化した車両や設備更新に伴う減価償却費の増加等により計上損益は悪化
・計画期間後も車両更新、施設・設備の老朽化対策による資本費負担増加継続。経常収支は均衡水準で推移見込み
都営バス
・庁舎改修による減価償却費増加で計上損益は拡大
・計画期間後は人件費、減価償却費縮減で計上損益の赤字は減少
感想・まとめ
ハード的に大きな変化はない印象。人手不足が極めて深刻。
経常収支は均衡からやや赤字が続く。鉄道事業は収支均衡だが、企業債残高は2028年度をピークに減少する。一方のバス事業は恒常的な赤字見通しが示され、2028年度に赤字は31億円となるそうだ。路線・便数の縮小が深く懸念される。
EVバスにシフトしていくのかな。