2012年に発表された「首都直下地震等による東京の被害想定」が2022年5月25日に更新された。前回想定から住宅の耐震化や不燃化が進展、都内の人口構成が変わったことなどを反映させた見直し。最も被害が大きくなることが想定される「都心南部直下地震」について被害想定の内容を確認しておく(2022/05/26)。
- 想定地震
- 都心南部直下地震(M7・3)
- 参考:液状化
- 津波 南海トラフ巨大地震の各区における最大津波高と場所
- 想定される建物・人的被害 都心南部直下地震 冬・夕方 風速8m/s
- 想定されるインフラ被害
- 生活への影響 都心南部直下地震 冬・夕方 風速8m/s
- 感想・まとめ
- 参考
想定地震
・M7級首都直下地震(都心南部直下地震など)やM8〜9級海溝型地震(南海トラフ巨大地震など)をベースに想定地震を複数設定。今回はもっとも大きな被害が見込まれる「都心南部直下地震」を中心に内容を確認しておく。
※2012年の前回想定では「東京湾北部地震(M7・3)」が代表的な想定地震となっていた。今回は「都心南部直下地震」となっている。
都心南部直下地震(M7・3)
震度分布 江東区は震度7も
参考:液状化
・前回想定では沈下量の項目はなかった。晴海から月島にかけて沈下量7センチ以上のエリアがあることが気になる。豊洲埠頭でも5センチ程度の沈下量があらようだ。
津波 南海トラフ巨大地震の各区における最大津波高と場所
地盤が高いので問題はないだろう。
中央区勝どきの朝潮運河の水門の外側にも2・2〜2・5mの津波が想定されている。
要警戒。
各区の最大津波高(前回想定)
中央区 2・42m(2・51m)
江東区 2・63m(2・55m)
港区 2・37m(2・47m)
品川区 2・38m(2・61m)
大田区 2・25m(2・27m)
江戸川区 2・24m(2・11m)
埋立地 1・99m(2・06m)
最大津波到達時間 南海トラフ巨大地震
中央区 200分〜
江東区 195分〜
※従来と変わらない。
参考 長周期地震動の検証
・一般に海溝型地震で発生するが、内陸部の地震で発生したケースもあり、2021年3月千葉県北西部地震について再計算したところ、都心部周辺でも長周期地震動による被害の可能性があることがわかった。
想定される建物・人的被害 都心南部直下地震 冬・夕方 風速8m/s
震度別面積率
人的被害
被害棟数
想定されるインフラ被害
電力停電率
通信不通率
上水道断水率
下水道管渠
ガス供給停止
配電設備被害による停電
携帯電話不通ランク分布 江東区北半分や中央区のごく一部でランクA
※携帯電話の不通ランク
A 停電率、不通回線率の少なくとも一方が50%以上
B 40%以上
C 30%以上
D 20%以上
E 20%未満
・中央区北部や江東区の北半分では携帯電話の不通率が23区内でも特に高い地域となることが示されている。
上水道断水率 中央区、江東区では断水率40%超となる
1日後 26・4%
3日後 26・4%
1週間後 16・8%
1ヶ月後 0・0%
※復旧完了は都心版部直下地震では約17日後。
下水道 管渠被害は中央区が2〜5%、江東区は5〜10%
※復旧推移(都心南部直下地震)
1日後 3・0%
3日後 2・7%
1週間後 2・0%
1ヶ月後 0・0%
ガス供給停止率 中央区は20〜30% 江東区は40%以上
※復旧がおおむな完了するのは都心南部直下地震では約6週間後。被災状況によっては復旧期間が長期化する点に留意が必要
生活への影響 都心南部直下地震 冬・夕方 風速8m/s
避難者数
1日後 175.7万人
4日〜1週間後 299・3万人(避難所内 199・5万人)
1ヶ月後 164・9万人
帰宅困難者数
・東京都市圏内から都内に流入する人のうち、帰宅困難者は昼12時に最大(約415・1万人)
食料、飲料、毛布の1週間の必要量 都心南部直下地震
・食料 避難所避難者数×1・2倍×1人1日3食 最大4668万食
・飲料水 断水人口×1人1日3リットル 最大6762万リットル
・毛布 避難所避難者数×1人2枚 399万枚
エレベーター閉じ込め 都心南部直下地震 冬・夕方 風速8m/s
・閉じ込めにつながるエレベーター停止台数 最大22426台
経済被害 都心南部直下地震 冬・夕方 風速8m/s
・21兆5640億円(資産等18・9兆円 ライフライン・インフラ等 2・6兆円)
感想・まとめ
前回想定の中心だった東京湾北部地震とは別の地震の想定なので単純比較はできないが、おおむね同傾向という印象だ。
電気の復旧は早いものの、復旧は電気が早くガスはとても遅い。上水道、下水道のダメージは避難生活(自宅内避難含む)の質に大きな影響を与える。
自助3日。
こういう機会に生き残る術を改めて確認しておくことにする。