品川区は「しながわ水族館」について、施設老朽化などを背景に「リニューアルの方向性」を発表した。2027年度のリニューアルオープンを目指す。ポイントは大きく5つあって、その中でイルカ展示とイルカショーの廃止が告知された(2022/05/15)。
しながわ水族館「リニューアルの方向性」について
開園から30年が経過。品川区は2022年3月、社会ニーズの変化と施設・設備の老朽化を受けて「しながわ水族館のリニューアルの方向性について」をまとめた。
所在地 品川区勝島三丁目
施設概要
展示コンセプト「大地から大海原へ水のストーリーをたどる旅」
しながわ水族館はもともと、東京湾の史料や生物を紹介する「資料館」の設置案が原点(昭和50年代)。
1991年10月19日 開館
1996年8月 ペンギンランド新設
2001年7月 シャークホール新設
2004年12月 トンネル水槽新設
2006年8月 アザラシ館新設/イルカ・アシカスタジアム観覧席増設
2017年7月 ペンギンランド更新
・450種、4000点の生物を展示している
利用実績
・ピークは開館2年目の年間160万人超、最近は2019年度に40万人を割り込んでいる。
30年間の変化について
・施設・設備の老朽化が進んでいる
・近くに複数の娯楽性が高い水族館が同一路線に開館
・イルカショーが増えて集客力が低下
・対象者が子供から大人に変化
展示における課題
開館当初は子どもの教育を意識した科学系博物館として計画された。
同時期に周辺には大人をターゲットにした巨大水族館が続々誕生。
しながわ水族館は「子どもの教育」を重視し続け、社会のニーズから遅れた
イルカ展示とイルカショー
開館当初は首都圏唯一のイルカショーが強い誘客力を持っていた。
その後、近隣にオープンした2館がより大規模なイルカショーを展開。
世界的趨勢としてイルカショー、イルカ展示の廃止が進む。
競合水族館(2018年度=コロナ流行前実績)
次世代区立水族館の開発
主な方向性
・イルカ展示とイルカショーの廃止
継続に必要な水槽規模、展示を有効にするショー施設を考えると莫大な建設費と維持管理費が必要。都内初のイルカショーという独自性はない。イルカショーによる集客は時代に合わない。公立水族館が新たに取り組むべきことではない
施設規模
場所 しながわ区民公園内の勝島の海隣接地
規模 延床面積約5000平方メートル程度
年間利用者 初年度100万人、5年後60万人
今後のスケジュール(予定)
2023年度 事業者・設計者選定
2023〜25年度 設計期間
2025〜27年度 工事期間
2027年度末 リニューアルオープン
感想・まとめ
水族館、好きなんだよなあ。検討委員からは、廃止という方向性は聞かれず、財産として大きな価値があるとする声が多かった。リニューアル後にイルカショーを廃止するのは、同じ土俵で戦っても勝ち目のない競合施設がある以上やむを得ない判断だろう。
参考:競合水族館の料金(大人1人)/年間入場者数(2018年度)
サンシャイン水族館 2400円/173万人
すみだ水族館 2300円/130万人
葛西臨海水族園 700円/129万人
八景島シーパラダイス 5500円/148万人
マクセルアクアパーク 2300円/170万人
・・・
しながわ水族館は 大人1350円/44万人
同じことをやっても厳しいとは思う。
独自性をどう打ち出していくか。
子どもターゲットを改めて打ち出す?
とても難しい課題だと思う。