国土交通省の「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」(2016年7月)で公表された「都心部・品川地下鉄構想の新設」は、2021年3月現在、東京圏の地下鉄ネットのあり方を調査する「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」の中で審議が続いている。最新状況のまとめ(2021/04/09)。
「都心部・品川地下鉄構想の新設」概要
都心部・品川地下鉄構想をめぐる状況について(2021年3月)
2018年度の調査で、品川駅既設線直下への品川新駅敷設や、品川駅での折り返し施設設置を事業から外したことで事業採算性が大幅に向上。事業の実現性が向上した。
2018年度調査と交通政策審議会答申(2016年)との比較
・事業費 800億円(交政審答申 1600億円)
・費用便益費 2・57〜3・14(交政審答申 1・2〜2・1)
・累積資金収支 16〜19年目(交政審答申 25〜26年目)
答申以降の動き
2016年4月
交通政策審議会答申で国際競争力強化に資する鉄道ネットワークプロジェクトに
2019年3月
国土交通省「東京圏における国際競争力強化に資する鉄道ネットワークに関する調査」
東京都の考え方
・品川駅と都心部等を繋ぐことは都心部のポテンシャル向上に寄与
・品川駅周辺開発による効果を広域に拡充することにも寄与する
・事業化に向けた路線への位置付けについて検討。計画を早期に具体化する方針
東京メトロの考え方
・新線建設は行わない
・新線建設の協力を求められても、経営の健全性を崩さないことが大前提
・東京メトロネットワークとの関連性はある
参考:国土交通省の鉄道ネットワーク検討会より(2019年3月)
(国土交通省)
距離 約2・5キロ
検討ルート 具体的な想定ルートがないため、新線の品川駅は既存道路下を活用するA,B2案想定。
Aルート:国道15号と並行して駅を設置(他路線との乗り換え移動距離が比較的短い)
Bルート:国道15号と直行して駅を設置
(国土交通省資料より中の人作成)=細い点線は資料に未記載。勝手に推定。
※試算のためのルート。実際のルートは道路直下がほとんどになるだろう。
運転本数 1時間に12本/方向
運転時分 4分
総事業費 800億円(建設費763億円、車両費37億円)
建設期間 10年
輸送密度(1日あたり)
Aルート 13.4〜14.3万人→以降の検討で品川線の代表ケースとする。
Bルート 7・8万人
B/C(費用便益比) 2・57〜3・14
累積資金終始黒字転換年 24〜28年
所要時間
六本木→品川 約20分→約11分(乗り換え2回→1回)
溜池山王→品川 約14分→約9分(乗り換え1回→0回)
混雑率
目黒→白金台 17ポイント改善
新橋→虎ノ門 7ポイント改善
港区の見方(2019年5月)
・(品川線構想は)南北線の品川延伸と捉えることができる。
・2面4線のホームがあり、外側2線が目黒方面、内側2線が白金高輪止まり。
・内側2線は南北線が使用しているため、延伸の場合南北線の直通列車が走る可能性が高い
・具体的な計画は決まっていない。今後も状況を注視していく。
※南北線の延伸が本命。
参考:国土交通省小委員会資料より(2016年7月)
延長 2・0キロ
総事業費 1600億円
輸送密度 1日あたり73300人〜75800人
ピーク時最大断面輸送量 1時間あたり8400人〜8700人
B/C(費用便益比) 1・2
EIRR(経済的内部収支率) 4・9%〜5・3%
NPV(純現在価値) 147億円〜205億円
累積資金終始黒字転換年 24〜28年
事業スキーム 地下鉄補助
意義 都心部とリニア中央新幹線の始発駅となる品川駅や国際競争力強化の拠点の品川駅周辺地区とのアクセス向上
参考:東京都の広域ネットワーク計画について(2015年7月)
・一応取り上げられている。
感想・まとめ
冷静に考えると交通政策審議会198号答申の際の前提条件は新型コロナによって根本から崩れてしまっている。インバウンドの回復も相当な期間ダメージが続きそう。
そんな中で、実態と乖離してしまった交通政策審議会の想定をベースに、どこまで検討を続けられるのかという気もする。
【#東京メトロ】21年3月期第一四半期決算(前年同期と比較)
— どらったら! (@Chuoinfom) 2020年8月6日
営業収益 627億円←1102億円
四半期純利益 −136億円←182億円(赤字転落)
▼運輸成績(前年同期と比較)
輸送人員
2.91億人←4.06億人(−28%)
・・・
コロナの影響は大きい。 pic.twitter.com/BvFuRtqZJr
東京メトロは旅客が 3割減ってるからなー。