東京都の都市づくりのグランドデザインに基づく「都市計画区域マスタープラン」の原案が示された。目標年次は2040年代となっているこのプランで東京臨海部の未来がどう描かれているかを見ておく(2020/07/04)。
(東京都)
都市計画区域マスタープランについて
都市計画法に基づき、都道府県が広域的見地から都市計画の基本的な方針を定めたもの。今回は2016年版の改定にあたる。
政策誘導型の都市づくりを推進するため、社会経済情勢の変化や国の動向を反映しつつ策定。広域的な一体性を確保する上で配慮すべき事項について定める。
2016年版(前回)
都市づくりビジョン改定に合わせ、2025年を目標年次としたもの
2020年版(今回)
2040年を目標年次としたもの
中央区臨海部は<中核広域拠点域内>
中央区臨海部は<中核広域拠点域内>に位置する。
このうち、中央区月島地区(中央区島部)は「活力と賑わいの拠点」となっている。
※「活力と賑わいの拠点」:鉄道乗車人員の特に多い駅(年間1600万人+)周辺、まちづくりの取り組み熟度が高い拠点的な地区。
※参考 豊洲は中央区臨海部同様「活力と賑わいの拠点」、有明は「中核的な拠点」となっている。
臨海部について
河川整備と連携させた賑わい創出
水辺を楽しめる都市空間創出
水と緑の軸の充実
公共交通の充実で区部中心部と強く結ばれる
人と投資を呼び込み東京と日本の持続的成長を牽引
まちのエネルギー源に水素を先導的に導入
骨格幹線道路、BRT導入など、区部中心部と臨海部の道路交通ネットワーク充実
→東京2020大会の新規恒久施設。
臨海部に新たな一大スポーツゾーン
(有明)レガシーエリア
(辰巳・夢の島)マルチスポーツエリア
(海の森、若洲、葛西)ウォータースポーツエリア
用地地域の見直し
都市計画事業などの進捗に応じ適時適切に見直す
「用途地域等に案する指定方針および指定基準」などに即して実施
・都市道路廃止、幅員縮小、線形変更は都市計画道路沿道の要と地域などの変更を実施
都市居住推進施策の転換
・これまでの都市居住推進は一定の成果。今後は質の向上へ転換
・多様なライフスタイルに対応した住宅供給。
.木密地域解消と高経年マンションの機能更新(周辺住宅との共同化など)
機能更新に関する方針
(臨海部・東京湾岸道路から内陸側)
機能配置にあたり、港湾地域を除いて土地利用の転換を誘導し、多能な機能の集積と水辺の魅力を生かしたにぎわいのあるまちづくりをすすめる。
(臨海部・東京湾岸道路から海側)
まちづくり方針が明らかになった地域(青海や有明)をのぞき、工業地域か工業専用地域。物流機能を維持する。
首都高都心環状線の老朽化対策と連携したまちづくり
骨格的交通基盤整備
晴海線Ⅱ期などミッシングリンク解消、広域交流連携を促す路線の検討
骨格幹線道路の整備(注:環状3号線が該当か)
骨格幹線道路を補完する補助幹線道路整備(注:補助314号線延伸部が該当か)
コミュニティバスの運行、バスレーン設置などバス利便性向上
公共交通ネットワーク
(東京都)
通勤通学時の混雑緩和、速達性向上、空港・臨海部へのアクセス強化などの観点から計画的に鉄軌道の整備を進める
以下の各路線について鉄道事業者をはじめとする関係者との協議/調整を加速。調整が整った路線から順次事業に着手。
【答申において検討などを進めるべきとされた路線】
【その他の路線】
交通結節点周辺でシェアサイクルポート整備
下水道
対策強化地域で最大1時間75ミリの降雨に対応する施設整備
一般地区では50ミリに対応する施設整備。
廃棄物処理施設、リサイクル施設
清掃工場、不燃ゴミ処理施設などの施設整備は計画的に勧める
産廃処理施設の立地促進
そのほか
臨海部など老朽化した物流施設が多く立地するエリアで物流機能の高度化、大規模化などのニーズに対応する計画的、一体的機能更新に向けた取り組みをすすめる
地域の将来像
明石町・築地・佃・月島・勝どき・豊海町・晴海
○区部中心部に近接した利便性とスーパー堤防の整備などにより創出されたウォーターフロントの特性を生かし、緑豊かなオープンスペースなどを備えた、超高層から低中層建築物までが組み合わされ、多様で魅力的な複合市街地を形成(変化なし)
○環状第2号線及び晴海通りでは、街路樹の充実を図ることによりみどりの軸とするとともに、沿道のまちづくりによる緑化が進み、広がりと厚みのあるみどりを形成(変化なし)
○老朽建築物の建替えや計画的な土地利用転換などによって、道路整備及び都市型住宅や教育、福祉などの生活関連施設の整備が進むことにより、水辺と調和した魅力ある街並みを形成(変化なし)
○地区ごとの特色や、舟運、水辺の環境などを生かし、地区間で相互に連携を図りながら、東京の新たな成長を創り出す場所としてふさわしい機能を導入(新規)
○都市基盤の整備や土地利用の転換が進み、外国人を含む様々な人々に対応した住宅、宿泊、商業、文化施設等が修集積し、質の高い住環境と水辺や下町風情とが調和した、魅力のある拠点を形成 (築地) ・浜離宮恩賜庭園や銀座、隅田川、そして食文化など、魅力的な資源を有する地域のポテンシャルを生かしつつ、国際会議場等の機能を中核としながら、文化・芸術、スポーツ・ウェルネスなどの機能が融合して相乗効果を発揮し、国際的な交流が促進される活力とにぎわいの拠点を形成(新規)
・東京湾、隅田川、陸からの交通ルートが交差する要所にあることを生かし、舟運、バス、地下鉄などのインフラから成る広域交通結節点を形成(新規)
(月島・勝どき)
・勝どき駅、環状第2号線及び月島駅の周辺では、拠点形成にふさわしい都市機能の更新や、歩行環境が改善された魅力ある活力とにぎわいの拠点を形成(一部追加)
・佃及び月島では、路地空間などを生かした個性ある街並みを形成(変化なし)
(晴海)=新設
・東京2020 大会後、選手村では多様な人々に対応した住宅や生活利便施設などが立地し、水素エネルギーが活用された、大会のレガシーが感じられる都市型居住ゾーンを形成するとともに、地区全体では既存の業務・文化機能を生かしつつ、教育施設をはじめとする公共・公益施設等の充実が図られ、調和のとれた複合市街地を形成
・広域的な交通ネットワークの形成や安全や快適な歩行者ネットワークの形成により魅力ある活力とにぎわいの拠点を形成(新規)
・水辺では、緑化を推進するとともに、遊歩道、スポーツ施設、公園、水辺に顔を向けた建築物などを整備し、回遊性と憩いのあるプロムナードを形成
(晴海)
・既存の業務・文化機能をいかしつつ、選手村整備を景気に土地利用転換を促進し、教育施設をはじめとする公共交易施設や生活利便施設の充実、選手村レガシーとして国際的な交流機能の誘導、水辺を生かした環境整備および良好な住宅供給を図り、国際的なビジネス拠点を支える都市型居住ゾーンを形成
・水辺では、緑化を推進するとともに、遊歩道、スポーツ施設、公園、水辺に顔を向けた建築物などを整備し、回遊性と憩いのあるプロムナードを形成
(2014年版)
有明・青海・台場(2014年版は「臨海副都心」)
・職・住・学・遊のバランスのとれた複合的なまちづくりが実現され、人や情報の国際的な交流が活発に行われるとともに、交通結節性やアクセス性が強化され、業務、商業、居住、教育、宿泊、MICE 関連施設など、東京圏に求められる先導的な機能が高度に集積し、観光客やビジネスパーソン、研究者、留学生などでにぎわう中核的な拠点を形成
・多様な都市生活に対応した居住機能を導入し、緑豊かな旧防波堤や東京港の眺望を生かした良好な住環境を形成するとともに、活力とにぎわいのある商業・業務機能、魅力あるスポーツ・文化・レクリエーション機能、学校などの公共・公益機能、都市型工業・流通機能などがバランス良く複合した市街地を形成
・有明テニスの森公園等により生活の楽しさや豊かさを享受できる文化・レクリエーション機能、国際展示場等の周辺施設と連携した国際競争力に資するMICE 機能など、質の高い複合空間や都市環境を形成 ・新客船ターミナルの整備により、多くの大型クルーズ客船が寄港することで、観光の拠点を形成し、水上交通が活性化するとともに、りんかい線やゆりかもめなどとの交通結節機能を強化
・レインボーブリッジを望む水辺やシンボルプロムナードなど、水と緑の空間がゆとりを創出するとともに、自然環境を保全
・豊かな緑の創出や太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用により、環境負荷の低減を実現するエリアを形成
・地区ごとの特色や、舟運、水辺の環境などを生かし、地区間で相互に連携を図りながら、東京の新たな成長を創り出す場所としてふさわしい機能を導入
(有明南・青海・台場)
・ホテルやエンターテインメント性の高い娯楽.商業施設、国際研究大学村やお台場海浜公園をはじめとるす水辺のオープンスペースなどをいかすことによる、観光客や研究者、留学生、ビジネスマンなどで賑わう地域を形成
・臨海副都心の骨格となるシンボルプロムナードを中心に、MICEの拠点などを形成
・豊かな緑の創出や太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用により、環境負荷の低減を実現するエリアを形成
・災害時の広域的な支援などに対応する基幹的広域防災拠点を形成
(有明北)
・緑豊かな旧防波堤や海の眺望を生かし、潤い豊かな都市型住宅と活力とにぎわいのある商業・業務機能、魅力あるスポーツ・文化・レクリエーション機能、学校などの公共・公益機能、都市型工業・流通機能などがバランス良く複合した市街地を形成
・オリンピック・パラリンピック競技大会の競技会場周辺では、オリンピックレガシーの活用により、魅力的なまちを形成
・有明テニスの森公園をはじめとした都民位開かれたスポーツ・レクリエーション施設の整備促進により、臨海地区スポーツクラスターの一角を形成
・環状第2号線および晴海通りでは、街路樹の充実を図ることにより緑の軸とするとともに、沿道のまちづくりによる緑化が進み、広がりと厚みのある緑を形成
(2014年版)
豊洲(2014年版は「豊洲・晴海・東雲」)
・豊洲は、東京、そして日本の中核市場のある地域として、活力とにぎわいの拠点を形成
・都市基盤の整備や土地利用の転換が進み、外国人を含む様々な人々に対応した住宅、宿泊、商業、文化施設等が集積し、質の高い住環境と水辺や緑が調和した、魅力のある拠点を形成
・豊洲駅周辺では、地下鉄8号線延伸によるゆりかもめ等との交通結節点強化を見据え、業務、商業、居住、教育などの機能が集積され、水辺やドック跡を生かしたにぎわい空間、眺望を生かした居住空間などが整備されることにより、拠点性の高い複合的な市街地を形成
・周辺エリアと調和したスカイラインや海辺景観の保全などにより、魅力ある水際の都市空間を創出
・首都圏の食を支える豊洲新市場周辺では、先進的な市場流通を実現するとともに、環境に配慮した新たな活気ある都市空間を形成
・環状第2号線沿道では、みどりが充実した快適な都市空間を形成し、商業や文化などの多様な機能の立地が進むとともに、BRT等により、臨海部と区部中心部とを結ぶ公共交通が充実し、交流を活性化
・地区ごとの特色や、舟運、水辺の環境などを生かし、地区間で相互に連携を図りながら、東京の新たな成長を創り出す場所としてふさわしい機能を導入
(豊洲)
・駅周辺では、都心と臨海副都心とを結ぶ位置にあり、千佳照および、ゆりかもめの交通結節点としての立地を生かし、業務、商業、居住、教育などの機能が集積され、水辺やドック跡を生かしたにぎわい空間、眺望を生かした居住空間などが整備されることにより、拠点性の高い複合的な市街地を形成
・周辺エリアと調和したスカイラインや海辺景観の保全などにより、魅力ある水際の都市空間を創出
・ 首都圏の食を支える豊洲新市場周辺では、先進的な市場流通を実現するとともに、環境に配慮した新たな活気ある都市空間を形成
(2014年版)
感想・まとめ
2014年版では豊洲、晴海、東雲が同じ括りだったのが、2020年版では別々のくくりになった、というのが最も大きな変更点だろうか。オリンピックがこれからの話だった2014年版は大会開催への期待が高かったということが伝わってくる。
2020年版は少し引いた位置で現実を見つめ直した感じ。
まあ、夢も結構入っているけど。
鉄道整備関連
中央区は「臨海地域地下鉄構想」を東京都の長期構想に盛り込むことを目標にしていたので、叩き台に一応乗った形になったのは歓迎すると思う。一方、検討深度が違う「東京8号線」については、進展はないとも取れる。
「多摩都市モノレール」の表記がなくなったのは事業着手段階に入ったからだろう。
・・・
小池知事が就任早々ぶっ壊した臨海部の交通計画は、放置されたまま任期満了となり、都知事選挙を迎えてしまった。dorattara.blog.fc2.com
東京臨海部の交通にとっては失われた3年半となった。
参考
東京都市計画 都市計画区域の整備、開発および保全の方針(原案)=2020年版
パブリックコメントは7月15日まで。
www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp