某マンション掲示板に、江東区有明の港区への編入の噂があると書いてあって、面白そうなので少し調べてみた(2020/01/07)。
(江東区、港区)
制度上、編入は可能か?
公益財団法人・特別区協議会がまとめた「23区の枠組み」という資料があった。
(特別区協議会)
中に23区の廃置分合と境界変更について、比較的簡潔にまとめた項目があったので、見ておく。
市町村の場合
地方自治法 第7条 市町村の廃置分合と境界変更を規定。ケースが限定されない。
特別区の場合
同法281条の4 特別区の廃置分合と境界変更を規定。ケースが以下に限定される。
認められているのは
①市町村の廃置分合または境界変更を伴わない特別区の廃置分合または境界変更
③都内の市町村の区域の全部または一部による特別区の設置
④都内の市町村の廃置分合または境界変更を伴う特別区の境界変更で市町村の設置を伴わないもの
のみ。
→特別区の存在する区域の縮小は認められていない。
江東区の一部を港区に編入することは可能か
特別区のある区域に変動が生じない特別区の間の廃置分合、境界変更は噂の「江東区有明の港区編入」になるが、これには規定が存在する。
同法281条の4の1
市町村の廃置分合又は境界変更を伴わない特別区の廃置分合又は境界 変更は、関係特別区の申請に基づき、都知事が都の議会の議決を経てこれを定め、 直ちにその旨を総務大臣に届け出なければならない。
手続きをすれば「可能」ということになる。
※実際に特別区の境界変更は少なくとも1953年に板橋区と練馬区の間で行われているようだ。背景は調べていない。
編入が行われるかどうかは別の話
編入実現には前提があって、
→双方の区と議会の調整が不可欠。
現状を見ると
・江東区議会では、江東区地先だったお台場が埋立地帰属で「港区に編入」を苦い過去として取り上げたのみ。
少なくとも話題にはなっていないと考えて良さそう。
補足:廃置分合について(今回は境界変更なので関係ない)
(香川県まんのう町)
地方公共団体の新設、廃止を伴うもの→廃置分合
感想・まとめ
江東区は概ね2040年までの長期方針の中で、有明地区について区内10箇所の「都市核」の1つに近く指定するようだ。
地区内では交通結節機能を強化/鉄道駅を中心に高度な都市機能を誘導、国際競争力がある拠点を形成/東京国際クルーズターミナルの整備にともなう観光拠点整備/水上交通活性化ーなどの実現を目指す方向らしい。
港区に編入するという話に現実性があるのであれば、江東区はもちろん、港区にとっても極めて大きなテーマになるはずだが、その様子はない。
・・・
存在しないことを立証するのは「悪魔の証明」なので、結局、状況証拠しかないわけだが、編入実現には江東区、港区双方の間の調整も必要だろう。その前段として港区、江東区双方での議論や手続きも必要。いずれも相当な期間が必要になるだろう。
実は、手続きというのは結構大事。
これは、中央清掃工場移転の噂について調べたエントリに追記したもの。
すぐにも移転しそうな噂で、あり得ないことは上の手続き上明らか。
ただ、編入話の場合は、60年以上前の実例が見つかっただけで、こういう明確なものがちょっと見当たらない。
いえることは、
①制度上は可能。
②編入話がここ10年以上、両区で議論された形跡はない。
の2点。
手続きが動いていない以上、現時点では可能性はゼロと判断できる。
そういう動きが公になったら素直に驚くことにするわ。