東京都の都心5区(千代田、港、中央、新宿、渋谷)への通勤者(都心通勤者)の割合は、この20年で都心近隣エリアでは上昇したものの、20キロ以遠では大きく低下したというレポートが金融機関から公表された。
職住近接の流れで都心居住が加速という話はよく聞くが、郊外の動きをまとめたレポートは目新しい(2019/04/21)。
レポート概要
1995年国勢調査と2015年国際調査を比較したもの。
2015年の都心通勤者 294万人(−29万人)
都心に住む人 32万人(+1万人)
18区に住む人101万人(−8万人)
都下に住む人 30万人(−5万人)
他県に住む人 132万人(−17万人)
(中の人作成)
都心通勤者の属性
若年層の都心通勤者 96万人→47万人
40代の都心通勤者 +17%
60代以上の都心通勤者 28万人→36万人
65歳以上の都心通勤者 +50%
都心通勤者の性別
男性 216万人→186万人
女性 107万人→108万人
20代 半減
30代 1・5倍
40代 1・7倍
(中の人作成)
都心からの距離で見た都心通勤者数
都心5区の地理的中心(元赤坂2)を起点
0〜10キロ 4%減少
10〜20キロ 3%減少
30〜40キロ 20%超減少
40〜50キロ 20%超減少
80キロ超 40%近く増加
全体 9・2%減少
都心通勤者増加の都市
県庁所在地などでも増加
高崎市 1900人(42%増加)
宇都宮市1682人(18%増加)
前橋市 753人(35%増加)
水戸市 567人(24%増加)=100キロ超
都心通勤圏の変化
都心からの距離別にみた都心通勤率(都心通勤者/総就業者)
0〜10キロ 40%台(都心5区含む)、30%程度(都心5区除く)
30〜40キロ 5%を下回る市町が現れる(5%は通勤圏の目安)
50キロ超 平均で5%を下回る
0〜10キロ 都心通勤率は上昇
10〜60キロ 都心通勤率は低下
20〜50キロ 都心通勤率は大きく低下
都心通勤者の都心回帰で職住近接進む
郊外では地元自治体や業務核都市などの都心以外で雇用吸収が拡大
都心からの距離による都心通勤率低下のペースが拡大
都心通勤率5%以上の自治体を都心通勤圏と定義し、都心からの距離と都心通勤率を1995年と2015年について散布図で比較。
1995年 回帰直線 y=−0・0043x+0・2910、R^2=0・5156
2015年 回帰直線 y=−0・0052x+0・3000、R^2=0・7054
①ばらつきが減少(R^2が増加)→都心アクセス改善で同等の距離の都市で都心へのアクセス時間が均質化
②近似線の傾きの絶対値が増加
1995年 都心から10キロ離れるごとに都心通勤率4%ほど低下
2015年 都心から10キロ離れるごとに都心通勤率5%ほど低下
通勤圏の変化の方向
①都心周辺の都区部は都心通勤率が上昇
②都下、他県の都市の多くは都心通勤率が低下
③1995年以降に鉄道新線が開通した沿線都市、利便性の高い駅周辺の大規模再開発で人口が増加した年では都心通勤者の増加、都心通勤率の上昇も。
④都心通勤圏 125市町(1995年)→121市町(2015年)
都区部、都下の変化
都区部
文京区、品川区、江東区など都心隣接、近接区が上位に浮上し、都心通勤率も上昇。
都下全体
18・2%(1995年)→16%(2015年)、三鷹・小金井・多摩で4〜5%ポイントの減少
都心通勤率上位の変化
1995年
①中野区 39・5%
②杉並区 39・0%
③世田谷区37・9%
④目黒区 37・8%
⑤浦安市 34・2%
⑥武蔵野市32・9%
⑦文京区 31・8%
⑧狛江市 30・6%
⑨小金井市30・1%
14江東区 28・3%
2015年
①中野区 37・2%(減少)
②目黒区 36・4%(減少)
③文京区 36・2%(増加)
④杉並区 35・9%(減少)
⑤世田谷区33・9%(減少)
⑥江東区 33・5%(増加)
⑦品川区 31・8%(増加)
⑧武蔵野市30・4%(減少)
⑨豊島区 29・7%(増加)
感想・まとめ
都心通勤者が減少しているということに驚きがあった。
都心通勤圏が縮小しているというのはなかなか興味深い。都心部での職住近接が進んでいるのはわかっていたが、郊外での動きというのはあまり知られていなかったのではないかな。
参考