住宅の断熱改修について、改修前と改修後の居住者の健康への影響調査に関する中間報告が公表され、得られつつある7つの知見が示された(2019/1/14)。
概要
断熱改修(省エネ区分A→SまたはA未満→AかS)を予定する住宅を対象に、居住者の血圧など健康への影響を検証する
対象
①健康調査(改修前) 2307軒、4131人
②健康調査(改修後) 679軒、1194人
調査項目
家庭血圧(起床時、就寝前)
床上1mの温湿度/床付近の温度(居間、寝室、脱衣場)
身体活動量
ほか
得られつつある7つの知見
①室温が年間を通じて安定している住宅の居住者の血圧は季節差が顕著に小さい
起床時の居間平均室温 冬18度以上、夏26度未満→室温安定群/それ以外→不安定群
(国土交通省)
居間室温季節差 安定群 4・0度差 不安定群 13・9度差
最高血圧 安定群 2・3mmHg差 不安定群 9・8mmHg差
最低血圧 安定群 1・1mmHg差 不安定群 5・4mmHg差
②居住者の血圧は部屋間の温度差が大きく、床近くの室温が低い住宅で有意に高い
(国土交通省)
・起床時の最高血圧と室温
居間と寝室を両方18度に保つ場合 130mmHg
居間を18度、寝室を10度 132mmHg
・起床時と就寝前の最高血圧
床上1mの室温が1度下がった場合より、床付近の室温が1度下がった場合のほうが血圧への影響は大きい
③断熱改修後に居住者の起床時の最高血圧が有意に低下
起床時の最高血圧 3・5mmHg低下
起床時の最低血圧 1・5mmHg低下
④室温が低い家では、コレステロール値が基準範囲を超える人、心電図の異常所見がある人が有意に多い
朝の居間室温(床上1m)が18度未満の住宅に住む人の総コレステロール値、LDLコレステロール値が18度以上の住宅に住む人と比較して有意に高く、心電図の異常所見も有意に多い。
総コレステロール(220mg/dL以上) 2・6倍
LDLコレステロール(140mg/dL以上) 1・6倍
心電図以上所見 1・9倍
⑤就寝前の室温が低い住宅ほど、過活動膀胱症状を有する人が有意に多い。断熱改修後に就寝前室温が上昇した住宅では過活動膀胱症状が有意に緩和
改修前・就寝前室温12度未満の住宅では18度以上の住宅と比較して「過活動膀胱症状」を有する人の割合は1・6倍
断熱改修後に過活動膀胱症状は、就寝前室温が上昇(改修前より平均2・5度以上上昇)した住宅で半減、室温が低下(平均2・5度以上低下)した住宅で1・8倍に上昇
⑥床近くの室温が低い住宅では、様々な疾病、症状を有する人が有意に多い
温暖群 床上1m 16度以上/床付近 15度以上
中間群 床上1m 16度以上/床付近 15度未満
寒冷群 床上1m 16度未満/床付近 15度未満
(国土交通省)
温暖群を1とした場合
高血圧 中間群 1・51/寒冷群 1・53
脂質異常症 中間群 有意差なし/寒冷群 1・39
糖尿病 中間群 1・64/寒冷群 有意差なし
聴こえにくい 中間群 1・31/寒冷群 1・39
骨折捻挫脱臼 中間群 有意差なし/寒冷群 1・65
⑦断熱改修に伴う室温上昇で暖房習慣が変化した住宅では、住宅内身体活動時間が有意に増加
断熱改修でこたつや脱衣所の暖房が不要になった場合の1日の住宅内軽強度以上活動時間
(国土交通省)
65歳未満 男性+22・8分/女性+27・0分
65歳以上 男性+34・7分/女性+33・9分
感想・まとめ
「得られた知見」ではなくて「得られつつある知見」ということに留意。ただ、なかなか興味深い。
「部屋を継続して暖かくするといいことあるし、床近くを暖かくするのが効果的!」
という感じか。
目安は床上1mが16度以上かつ床付近が15度以上。エアコンと床暖房(最弱ぐらい)の併用でよさそう。もっと暖かくするけど。
寒さに対する快適さの指標を血圧変動で見るというのは良い気がするなあ。
参考